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「サブプライム問題が中央銀行に与えた教訓」


 昨日の水野日銀審議委員の講演や会見における発言の中で、現在の中央銀行の役割が以前に比べ様変わりしつつある様子が垣間見える。そのひとつが講演の中の「サブプライム問題が中央銀行に与えた教訓」にある。

 「サブプライム問題は、既に金融市場参加者、監督当局、中央銀行等に幾つかのメッセージを与えたと思います。そのうち、中央銀行にとって重要なもののひとつに、(1)クレジット証券化市場の急拡大、(2)資金の調達・運用手段等の多様化、(3)クレジット・デリバティブを活用したリスクヘッジ手段の発達、(4)運用のグローバル化の下でその関係者が拡がっていく中にあっては、「広義の金融システム」に由来するリスク、具体的には経済主体が保有する金融資産・負債の毀損や資金仲介機能の低下等を通じ経済が不安定化するリスクなどをしっかりと把握していく必要があるということが挙げられます。」

 「従来、金融システムのモニタリングに当たっては、金融仲介のプレイヤーのうち「伝統的な銀行業務を行う金融機関」に焦点を当てていました。こうした前提を踏まえ、金融システムの保持に向け、新しいモニタリング体制等を構築していくことが必要と考えています。実際、証券化市場など金融システムが「狭義の金融システム」よりもはるかに発展している英国や米国では、イングランド銀行やNY連銀を中心とするFRBは市場動向のモニタリングに多くの人材を配置しています。」(日銀のホームページ「山梨県金融経済懇談会における水野審議委員挨拶要旨」より)

 これは裏を返せば、現在の日銀も「クレジット証券化市場の急拡大」「資金の調達・運用手段等の多様化」「クレジット・デリバティブを活用したリスクヘッジ手段の発達」、「運用のグローバル化」などを踏まえて市場動向のモニタリングのために多くの人員配置の必要性があるとみられる。モニタリングとともにそれを分析する役割を担った人の拡充といったものも求められると思われる。

 そして、現在の中銀の姿が以前とはだいぶ異なってきていることが、次のような水野審議委員の会見内容からも伺える。

 「日米欧の中銀が強調したと言われているが、話し合いはしたが協調したつもりはない。日本は日本で正しいと思うことをやったし、ECBが ECBで正しいと信じることをやったということ。お互いについてコメントはしないし、するべきではないが、中銀ができることは庭先であるマネーマーケットの安定化を図るということ。したがって仮に日本の金融市場で流動性リスクのようなことが起きて、信用収縮が起きれば当然それなりに対処するが、今回は日本発ではない、したがって日銀は今回は積極的な行動を取ったと判断しないほうがいい」

 「もっとも昨年5月や今年2月の混乱で、米住宅市場の混乱が金融市場の調整につながるとの認識は中央銀行は持っていたので、その不安心理を増幅しないように適切に対応を取ったというのが私の評価だ」(以上はロイター「水野審議委員の会見一問一答」より)

 現在の、日銀やFRBやECBさらにイングランド銀行などは、以前に較べるとかなり政府からの独立性を維持している。これまではどちらかといえば政府主導での中銀の協調した金利操作なども行なわれた時代もあった。しかし、現在の対応はそれぞれの中銀に任され、さらに中銀同士の連携も政府が介在した時代とは状況も異なっている。

 まずは庭先の安定化を図ることが重要となる。必要以上に積極的に行動を取ってしまうとその反動といったものがあるため、その国々の情勢を確認した上でのそれぞれ適切な対応が求められる。

 しかし、それでもグローバルな金融市場の動揺に対しては、中銀同士の情報交換などを通じての状況認識といったものも重要になる。今回の金融市場の混乱に際しても、日銀でも現場サイドなどではかなり密に中銀同士での情報交換なども行なわれていたとも聞くが、ECBの対応も、FRBの対応も、さらに日銀の対応も連携というよりは、アイコンタクトのように、それぞれの判断での対策を講じたとみられる。

 今後も同様の事態はいろいろなかたちで起こってくるとみられるが、その際にも各国中銀が適切な対応を行い、グローバルな金融不安の連鎖などに対処するために、情報の共有などを通じての、中銀の連携が求められるのではなかろうか。対処方法はそれぞれに委ねられても、問題をしっかり共有して適切に対処する限り、市場心理をうまく和らげ、必要以上のパニック的な動きを緩和させることが可能になるとみられる。それぞれの中銀が独立性を維持させるためにも、いかなるときにも柔軟に対処できるための基盤を構築していくことも必要となろう。
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by nihonkokusai | 2007-08-31 11:00 | 日銀 | Comments(0)
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