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「複雑な金融商品とサブプライム問題」


 今月9日あたりからの、米サブプライム問題に端を発した世界の金融市場のパニック的な動きの発端は、9日にドイツ連邦銀行が、IKB産業銀行がサププライムでの投資に伴う損失発生に対しての救済策を協議するため、緊急会合を開催したことであったかとみられる。さらに仏銀最大手BNPパリバは9日、傘下の 3つのファンド、に関して7日午後から応募と償還をともに凍結したことを発表した。次はどこかとの連想も加わり、欧州銀行向け資金の出し手が限られてしまい、ユーロ翌日物金利はECBの誘導目標値の4.0%から4.7%近辺に上昇し、このためECBは大規模な資金供給を実施した。

 独IKB産業銀行の問題からは、銀行自身がこういった金融商品のリスクを十分に把握していないといった状況も明らかとなった。そもそもなぜ独IKB産業銀行などの欧州の銀行が、こういった複雑な仕組みの商品に投資していたのであろうか。

 IKB産業銀行は中小企業向け融資を実施する堅実な銀行だったとみられるが、収益源の多様化・多角化が求められるようになった。この一環として、関連会社を設立して米国の複雑な債券に投資したのである。これには格付会社からの見えない圧力といったものも指摘されていた。今回の世界的な金融市場混乱にはこの格付会社の問題も指摘されている。

 独IKB産業銀行の関連会社は、債券投資に必要な資金を、主に米国の金融機関などからコマーシャル・ペーパー(CP)と呼ばれる社債を起債することで調達していた。CPとは期間1年未満の短期の社債である。しかもその担保にはモーゲージが含まれていた。

 今年の2月あたりから米国住宅市場が減速し、2005年から2006年に証券化されたサブプライムモーゲージが、金利が跳ね上がる2年を過ぎたものが出てきており、支払い遅延やデフォルトが相次ぐようになった。これによりCDOの価格が下落し、さらにCPを購入することで資金を供給していた米国投資家が、担保にサブプライムモーゲージが含まれていることを嫌気し、その購入を手控えてしまった。これにより独IKB産業銀行の関連会社は資金繰りの問題に直面し、ドイツ連邦銀行が救済策を協議したのである。

 今回の金融市場の動揺の背景には、高度化というよりも複雑化した金融商品に隠れていたリスクが表面化したことも大きい。信用力が低いサブプライムローンの焦げ付きに関しては、グリーンスパン前議長も警告していた住宅市場のバブル崩壊が要因である。サブプライムローンには当初2年間は低い金利で借りることができるものがあり、その間での住宅価格の上昇を見込んだものの当てが外れ、結果として焦げ付きとなったとみられる。

 しかし、ここまで問題が大きくなった背景には、米国で発達した新たな金融商品に対する問題がある。単純に考えれば、サブプライムローンについてはそういった層に融資していた金融機関など直接被害を受けるものの、それが世界的な影響を及ぼすことは考えづらいはずである。しかし、そもそもサブプライムローンという仕組みが可能となる「仕掛け」が金融工学を駆使していると言う米国市場にはあった。

 その仕組みのひとつが日本でも一般的になりつつある「証券化」である。たとえば金融機関一社が、こういったローンのリスクを一人で背負うことには無理がある。そのため考え出されたのが、そのローンを担保にした証券を発行し、数多くの投資家に転売してしまおうという仕組みである。つまり一社では背負い切れないほどのリスクなれど、そのリスクを細分化して広範囲にばら撒いてしまう手法でもある。もちろんトータルのリスクが軽減するわけではない。しかし、この仕組みならば従来では不可能であったようなローンも組むことが可能となる。

 こういった住宅ローンを裏付けにした証券が、住宅ローン担保証券、RMBS(Residential Mortgage-Backed Securities)と呼ばれるものである。さらにこれを組み入れて証券化したものが合成債務保証券、CDOである。CDOはRMBSなどの証券を複数束ねて再び証券化した金融商品である。これでさらに複雑化される結果となる。

 例えれば、野菜が嫌いな子供に、野菜を食べてもらおうと、まず野菜本体を細分化して(RMBS)、野菜という存在を見えにくくした上、肉や他の野菜も組み合わせた上、さらにスパイスを効かせる(格付け等)などしておいしそうなカレーにしてしまったのが、CDOである。これならば投資家も美味しく食べられる、はずであった。

 しかし、米住宅バブルの崩壊により、サブプライムローンの焦げ付きが増加した。そして格付け会社がそれを組み入れたRMBSやCDOを格下げしたことで、RMBSやCDOの時価評価の必要に迫られ、その結果、こういったCDOを保有していた欧米の金融機関での巨額な損失が表面化したのである。こういった商品はもともと評価の難しい個人向けローンが担保になったものであり、あまりに複雑にしすぎた結果、時価評価が難しいのは独IKB産業銀行の問題からも明らかとなっている。
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by nihonkokusai | 2007-08-17 13:40 | 債券市場 | Comments(0)
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