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「金融政策は賛成多数で現状維持」


 7月11日から12日にかけて開催された日銀の金融政策決定会合においては、8対1の賛成多数で現状の金融政策を維持することを決定した。反対したのは水野委員。債券市場などでは今回の会合での追加利上げを見る向きはほとんどなかったこともあり、現状維持との結果に対して市場への影響はほとんどなかった。今回は反対票が一票出たが、この結果を見て8月の追加利上げの可能性を読み取ることもまだ難しい。

 ただし、福井総裁の議長提案が行なわれるといった環境となれば、次回会合での追加利上げの可能性は強まろう。この福井日銀総裁は6月18 日の会見では、より慎重な姿勢を見せていたように伺えた。たとえば、「米国経済の今後の方向は、もう少し見極めなければ誰もが完全にそうですとは言えない状況にあると思います。設備投資にしても個人消費にしても、内需の基調的な拡大の持続性について私どもはより確証が欲しいと考えています。」とコメントしていたためである。

 ただし、本日の総裁会見では、「4-6月期のGDPが低めでも決定的要因でない、ほかの指標を含めて判断」「私自身はシナリオ通りの動き続けば将来利上げ間違いないと確信」「各委員の経済の見方、後退よりは進展したと思う」「選挙結果がどう出ても経済全体への影響見て判断」との発言があった。この発言からは、これまでの追加利上げに向けての姿勢に変化はなく、あくまでそのタイミング計っているともとらえることができる。

 ちなみに、追加利上げを行なう際には、少なくとも政策委員の過半数が賛成し、加えて執行部でも過半数が賛成することが必要条件ではないかとも推測される。もちろん副総裁も一票は一票であり、2月の会合のように岩田副総裁が唯一の反対票を投じるといったことも現実に起きている。一枚岩と呼ばれた総裁、副総裁で構成される執行部票が初めて割れたわけであるが、それでも総裁と副総裁2人の意見が完全に分かれるケースでの議長提案も行いづらいのではないかと思われる。

 こういったことから、日銀が追加利上げに動くためには、福井総裁自らが利上げに前向きの姿勢を示すとともに、副総裁のうち一票、この場合は岩田副総裁が2月の追加利上げに反対していたことを踏まえ、もう一人武藤副総裁の動向といったものも注目点となろう。さらに審議委員6人の過半数の賛成も必要になる。たとえば1月18日に水野委員とともに現状維持に反対した須田委員、野田委員とさらにもう一票加われば、過半数となる。

 もちろん、こういった票読みよりも先に、今後の追加利上げの可能性を見るためには、足元の経済物価動向の確認が必要となる。今回、追加利上げが見送られた背景のひとつにとして足元経済指標なども影響していた可能性もある。たとえば、5月の鉱工業生産動向(速報)の生産が前月比-0.4%の低下と3か月連続の低下となり、予想の+0.8%を大きく下回ったことや、5月の全国の消費者物価指数(生鮮食品を除く)が前年同月比-0.1%となったものの、同時に発表された6月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、予想の+0.1%から前年同月比-0.1%となっていた。

 さらに、日銀が最も重視している経済指標のひとつ短観についても、7月2日に発表された6月集計分は、大企業・製造業業況判断DIは前回と変わらずの+23と市場予想の通りとなり、高水準を維持した。ただし、2007年度大企業・全産業の設備投資計画は前年度比+7.7%、中小企業・全産業の設備投資計画は前年度比-16.3%と3月からは上方修正されていたものの、予想されたほどの修正幅ではなかったことも確か。しかし、ここにきての経済・物価の指標は、消費者物価動向がやや下振れているものの、4月の展望リポートの内容に即した形ともなっていることも確かである。

 そして、もうひとつ気になるものとして米サブプライムの問題がある。7月4日の武藤副総裁の講演において、「米国経済については、住宅市場の調整の進捗度合いや設備投資の先行きを不安視する見方もあります。ここ数か月話題になっている低所得者層を対象にした住宅融資の延滞問題、いわゆるサブプライム住宅ローンの問題については、景気全体や金融システムに広範な影響を及ぼさないとの見方が強まりつつあるようですが、住宅市場の調整が想定以上に深刻なものとなったり、設備投資が下振れた場合には、景気は一段と減速する可能性があります。」と発言していたようにサププライム住宅ローンの問題については引き続き注意を払っている姿勢が伺えた。

 これに対して、福井総裁は本日の会見で、「(米サブプライム問題で)米クレジット市場全体に影響及ぼしていない」とし、「米経済は、減速しつつもソフトランディングに向かう可能性高い」と発言している。サププライムの問題に関しては先行きの不透明感も強いものの、ウォーシューFRB理事も、「今のところ、信用リスクは金融システムに大きな影響を与えていない」との発言もあり、米当局者もそれほど深刻視はしていないともみられた。

 また、12日に公示された参議院選挙の結果次第では、政局のみならず財政運営、さらに日本の景気などにも影響を与える可能性もあることで、その結果を確かめたいところでもある。これに関して福井総裁は「選挙結果がどう出ても経済全体への影響みて判断」との発言もあった。

 8月に発表される4-6月期のGDPを含めて、8月22日から23日の金融政策決定会合前までに発表される経済や物価の指標を確認するとともに、米国経済の動向などを見ながらあらためて、8月における追加利上げの可能性を模索してくるものとみている。

 以上のことを踏まえて、8月22日の会合までの金利の動向予想をしてみたい。市場では8月の追加利上げの実施を見る向きが多く、今回の決定会合結果や総裁会見の内容からもその見方は後退することはないと思われる。8月の追加利上げの可能性は高いものとみられることで、特に中短期の金利は下がりにくい状況が続くとみている。5年債利回りは当面、1.5%を挟んでの動きが予想される。長期金利に関しては、米国金利動向などの影響も受けやすく、さらに選挙動向などを見ながら海外投資家などの思惑的な動きも出るとみられ、1.8%から2.0%のレンジ内ながらやや動きの荒い展開も予想される。さらに超長期の金利についても、ここにきて上昇圧力を強めているが、8月利上げの可能性が強い以上、投資家も慎重姿勢を取らざるを得ず、押し目買いに徹することを予想すれば、この傾向は当面続くものとみられる。総じて金利は上昇圧力も強めそうだが、すでに8月利上げもある程度織り込んでいることを考えれば、ここからさらに大きく金利が上昇していくことも考えづらい。このため、長期金利の2%は心理的な壁し意識されるものと見ている。ここ一年間の日銀の金融政策の推移

2006年8月11日、現状維持、全員一致
2006年9月8日、現状維持、全員一致
2006年10月13日、現状維持、全員一致
2006年10月31日、現状維持、全員一致
2006年11月16日、現状維持、全員一致
2006年12月19日、現状維持、全員一致
2007年1月18日、現状維持、賛成6反対3(反対は須田委員、水野委員、野田委員)
2007年2月21日、無担保コールレート翌日物誘導目標値を0.5%に引き上げ、賛成8反対1(反対は岩田委員)
基準貸付利子を0.75%に引き上げ、賛成8反対1(反対は岩田委員)
2007年3月20日、現状維持、全員一致
2007年4月10日、現状維持、全員一致
2007年4月27日、現状維持、全員一致
2007年5月17日、現状維持、全員一致
2007年6月15日、現状維持、全員一致
2007年7月12日、現状維持、賛成8反対1(反対は水野委員)
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by nihonkokusai | 2007-07-12 13:06 | 日銀 | Comments(0)
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