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「金融政策と債券市場との関係」


 私は債券市場と関わってきて20年以上も経過しました。債券先物が日本の金融先物として初めて東京証券取引所に上場されてから1年経った1986年10月に債券ディーラーとなり、億円単位の売買を経験することになりました。債券ディーラーといっても顧客対応といったものではなく、完全に自らの思惑で売買する所謂、デイトレーダーでした。日々、自らの損益が明らかになり日報に掲載され、成績が一目瞭然でした。いずれ役に立つだろうと毎日ノートにその日の売買をつけてもいました。1986年10月から1987年3月までは完全に赤字、つまり損失が出ました。しかし、これが大きな教訓ともなり、年度ベースとしてはこの1986年が唯一の赤字となりました。それからはいかにすればマイナスを出さずある程度安定した収益が出せるのか、試行錯誤の連続となりました。

 日々の値動きや、相場を動かす要因などを分析することも重要です。先輩からは株式市場での経験からのチャートの見方を教えられ、さらに自分で足を引く大切さも教わりました。当時は自動的にチャートを書いてくれるパソコンなどなかったこともありますが、手で書いて身を持って覚えることはもやはり大切です。相場の読みは経験の積み重ねで養われますが、そのパターン分析力を身につけるには、目も頭もそして手も総動員する必要があります。大きな相場変動の前兆といったものがなんとなく掴めるようになれば、大きな損失から免れるとともに、それをチャンスとしてある程度の収益を得ることで、相場変動が小さいときの細かいロスといったものも補えたのです。

 そんなストレスに晒された債券ディーラーという業務を14年以上経験しました。その経験から見て、金融政策と債券相場の関係を改めて見直してみると、金融政策が債券市場に大きな影響を与えていたことは確かです。印象的だったものとしては、1987年の10年89回債が当時としては史上最低利回りの2.555%をつけたときのことがあげられます。この日の新聞に大手証券の債券売買担当者から「公定歩合が高すぎる」とのコメントが掲載されました。長期金利が低すぎるのではなく、公定歩合が高いと決め付けていたのです。当時は債券のディーリング全盛時代でした。

 しかし、この債券ディーリング全盛時代も日本のバブル崩壊により終局を迎えます。1989年の5月と10月に公定歩合が引き上げられ、これにより債券相場は調整局面を迎えました。しかし、日経平均は1989年末まで上昇を続け、すでに債券バブルの終焉を見ていたものとしてはこの株価の上昇にはかなり違和感も覚えていました。実際にはこのあと株も急落することとなります。1990年8月30日に日銀は第5次公定歩合の引き上げを実施し、この影響で債券先物は急落し史上最安値となる87円08銭まで下落したのです。

 このように昔は日銀の金融政策の変更は、現在と異なりダイナミックに債券相場に影響を与えました。しかし、日銀法が改正されたあたりからは、日銀の金融政策の変更が大きなショックとして影響を与えることは少なくなってきているのも事実です。その中にあってひとつの例外といえるのが、日銀の金融政策の変更ではありませんが、2002年9月18日に金融システム安定化策としても日銀が直接に金融機関から株を買い取ることを発表したことによる債券急落です。この発表を受けて債券先物は1999年6月11日以来のストップ安をつけ、さらに翌々日の20日の10年国債入札における札割れが発生してしまったのです。ちなみにこの札割れのあった当日に、拙著「日本国債は危なくない」が発売されました。

 バブル崩壊後に長期金利が低位安定し続けていた背景には、ディスインフレといった影響も大きかったと思われますが、それとともに金融政策の変更時のショックがかなり緩和されてきていることも要因です。さらに投機的な動きが限られ投資家主導となるなどしたことで値動きの荒さが抑えられた側面もありますが、ある程度事前に金融政策の変更を織り込んできていることで、日銀の金融政策に対しての不確性が軽減されてきていることも事実です。

 長期金利は現在の短期金利の居所と将来の短期金利の予想が反映されて形成されていると言われます。そこに将来の不確実性に対するリスクプレミアムが加わって長期金利は短期金利よりも高いことが多くなっているのです。長短金利が逆転するといったことも過去の日本でもあったため、一概にイールドカーブが順イールドではあると決め付けることもできません。その時々の金利を取り巻く環境に応じて、リスクプレミアムなどへの見方も変化するためです。

 日銀の金融政策は、短期金利を操作することによって長期金利に働きかけて経済や物価に影響を与えようとするものです。しかし、2007年3月のゼロ金利解除、7月の量的緩和解除といった大きな政策変更があったものの、長期金利は非常に落ち着いたものとなっていました。これは将来に向けてのインフレ予想が CPIなどによって極めて限られたものになっていたことなども要因かと思われます。しかし、経済の正常化とともに物価も次第に上昇圧力を強めてくるとみられ、やや日銀の金融政策の変更からラグを置きながらも、長期金利もじわりじわりと上昇圧力を強めてくるものと思われます。
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by nihonkokusai | 2007-06-06 13:36 | 債券市場 | Comments(0)
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