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「決定会合での5対4はありうるか」


 5月12日の日本金融学界における武藤日銀副総裁の講演内容がなかなか興味深い。講演のタイトルは
「中央銀行の政策決定と委員会制度」
で、日銀の金融政策決定会合に関して、まとまっておりたいへん参考になる。この中で武藤副総裁は下記の発言をしている。

 『金融政策決定会合の採決についてみますと、全会一致でないことがしばしばあります。私は2003年3月に副総裁に就任して以来、本年4月までの間に63 回の金融政策決定会合に出席しました。この間に金融市場調節方針に関する議長案に対して反対票が投じられた回数を数えてみますと、3票入ったことが2回、 2票入ったことが15回、1票入ったことが5回ありました。』

 これは『各政策委員の自主性が尊重されている証左』と武藤副総裁はコメントしているが、コンセンサスを重視するFOMCと比較すると、反対票が投じられることが多いことは確かである。しかし、英国イングランド銀行のMPCにおけるこのような例も武藤副総裁は引き合いに出している。

 『MPCでは、採決にあたって、頻繁に反対票がみられます。時には、9名のうち4名までもが反対に回ることもあります。例えば、本年1月にイングランド銀行が利上げを行った際のMPCでは、採決は5対4でした。キング総裁は多数派でしたが、金融政策担当のロマックス副総裁、ビーン理事、タッカー理事は少数派となりました。この際の投票結果は、外部委員の4名は3対1で、内部委員の5名は2対3でした。また、2005年8月にイングランド銀行が利下げを行った際のMPCの採決も5対4でしたが、このときはキング総裁は少数派となりました。この際の投票結果は、外部委員の4名は4対0、内部委員の5名は1対4でした』

 『キング総裁が、その後の議会証言において、「我々は多数決により決定しているので、論理的に総裁を含む各委員は皆少数派になることがありうる。私はそれで構わないと思っている。…MPCでは、討議を経て、各委員が自己の信念に基づいて正直に投票することになっている」と述べていたのは印象的でした。』

 たまたま、イングランド銀行のMPCのメンバーの票数と、日銀の金融政策を決定する政策委員の票数は同じ9である。

 これに関しては「2007年1月19日の福井総裁の記者会見」における次の発言にも注目したい。

 『金融政策決定会合の場においては、総裁、副総裁2名を含め9人の委員はそれぞれ独立の立場の9人の中の1人ということで、それぞれはお互いに制約し合わないという意味で独立した1人1人が9人のメンバーを構成しているとご理解頂きたいと思います。今回はたまたま総裁、副総裁の3人は現状維持の方向で揃っておりましたが、理論的に言えば、この3人の意見が違うということも将来的にはあり得ます。従って、執行部であるとか、その他の審議委員であるとかといった色分けなしに議長としては公平に議論をさばいていきたいと思います。その結果、例えば4対4というケースもあり得るわけで、そのときは最終的に議長が決めるということになっています。』

 日銀の金融政策決定会合では議長提案が出される前に、それぞれの委員の意見がある程度集約される。その結果、4対4に意見が分かれているとみた際には、最終的に議長である総裁が議長提案をどちらで出すのかによって決定されるわけである。このためイングランド銀行のように総裁が結果として少数派になることは、この日銀の金融政策を決める上でのシステムからは考えづらい。しかし、結果としては5対4というのは現実にはありうることである。

 日銀の金融政策決定会合では議長提案が出される前に、それぞれの意見を聞いたうえで、FOMCのようにコンセンサスを意識した上での、政策委員の間での意見の刷り合わせといったものも行なわれているとみられる。それでもFOMCなどよりは個人の意見がより尊重されていることも確かである。2月の金融政策決定会合では、岩田副総裁が追加利上げに反対票を投じたように、執行部内でも意見の相違が出るということも現実化した。武藤副総裁は、MPCでの例において内部委員と外部委員それぞれの票数までカウントしている。これは多少状況は異なるかもしれないが、日銀で言えば3票の執行部票と6票の審議委員票も意識したものではなかろうか。

 以上のことから、日銀の金融政策決定会合での5対4というのはありうる。しかし、MPCよりはコンセンサスも重視しているとみられる日銀では、これまで反対票は多くとも3票に抑えられてきた。今後の金融政決定会合では、武藤副総裁がMPCの例を引き合いに「印象的」として指摘したように「討議を経て、各委員が自己の信念に基づいて正直に投票すること(キング総裁)」を、コンセンサスといったものよりも意識したものとなれば、いずれ5対4と言う結果もあるのかもしれない。
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by nihonkokusai | 2007-05-21 10:40 | 日銀 | Comments(0)
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