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「物価安定の目安」


 5月14日の日経新聞によると、「日銀の金融政策決定に携わる9人の政策委員の間で、望ましい物価上昇率の認識にばらつきがあることが明らかになった」そうである。

 日銀のホームページより4月27日に発表された展望レポートを見てみると以下のようになっていた。


 日本銀行は、昨年3月に「『物価の安定』についての考え方」を公表し、その中で、「中長期的な物価安定の理解」(金融政策運営に当たり、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率)について、原則としてほぼ1年毎に点検していくこととしていた。今回、概ね1年を経過したことから、点検を実施した。

そのポイントは以下の3点である。

(1)物価の安定についての基本的な考え方の再確認
「『物価の安定』についての考え方」で示した以下の点など、基本的な考え方が再確認された。
1.「物価の安定」とは、家計や企業等の様々な経済主体が物価水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況であること。
2. 金融政策の効果が波及するには長い期間を要し、また、様々なショックに伴う物価の短期的な変動をすべて吸収しようとすると経済の変動がかえって大きくなることから、十分長い先行きの経済・物価の動向を予測しながら、中長期的にみて「物価の安定」を実現するように努めていくこと。

(2)「中長期的な物価安定の理解」の検討の視点
「中長期的な物価安定の理解」の検討に当たっては、 1.消費者物価指数の計測誤差(バイアス)、2.物価下落と景気悪化の悪循環のリスクに備えた「のりしろ」、3.物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率、を考慮した。

この点、バイアスは、昨年の基準改定を踏まえても、引き続き、大きくないと判断される。「のりしろ」に関しては、企業部門の体力や金融システムの頑健性が高まっていることから、物価下落と景気悪化の悪循環が生じるリスクはさらに小さくなっていると考えられる。また、物価上昇率の変動が小さい中で、物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率には、大きな変化はないとみられる。

(3)「中長期的な物価安定の理解」の点検結果以上の議論を踏まえ、「中長期的な物価安定の理解」は、消費者物価指数の前年比で0~2%程度の範囲内にあり、委員毎の中心値は、大勢として、概ね1%の前後で分散している。


 以上が展望レポートで記述されていたものだが、日経新聞ではさらに踏み込んで、9人の委員の示した望ましい物価上昇率を明らかにしていた。委員の具体名までは明らかにはなっていないが、9人それぞれがどのように望ましい物価上昇率を示していたかまで明らかなものとなっいた。

 日経に掲載されていたグラフによると、9人のうち3人が0.5-1.5%、そのほかの委員は見方が別れ、1.0-2.0%、0- 1.75%、0.5-1.0%、0.3(?)-1.25%、0.25-1.75%、-0.5-0.5%となっており、一人の委員は下限は小幅マイナスでよいと主張したようである。

 ここまで具体的な内容がマスコミを通じて流されたというのはなぜか。もし公開する予定、もしくは公開してもよいという内容であったのならば、マスコミを通じずに直接に日銀が発表しても好かったのではないかとも感じたが、どうも日経がそれぞれの委員に聞いたものをまとめたのではないかとも見られる。

  「中長期的な物価安定の理解」が現実にマーケットでも、あまり「理解」が進んでいないというのは日経の記事にもあったとおりかと思う。今回、一人の委員が下限は小幅マイナスでよいとしたのは、現実にCPIが前年比マイナスとなりながらも、経済が緩やかな拡大基調となっている中にあっては、追加利上げに向けての意思を示している日銀の動きにもある意味整合的である。

今回の日経の記事は「中長期的な物価安定の理解」の理解を深めるべく、一石を投じたことといった意味もある。しかし、それとともに日銀の情報発信のありようにも結果として一石を投じた記事ともなっている。
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by nihonkokusai | 2007-05-14 10:34 | 日銀 | Comments(0)
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