「減税こそ財政構造改革の最善策」
9日の日経新聞に、カナダのフレアティ財務相とのインタビュー記事が掲載されていた。カナダといえば財政健全化策が功を奏し、単年度の黒字化を果たした国である。
1990年代のクレティエン政権下、政府主導によって強力な財政再建策が進められていった。当時、財務相として財政再建に大きな役割を果たしていたマーティン氏はクレティエン首相の後任として、さらに改革を促進するなど、継続的な財政再建の取り組みが進められた。ここには国民の理解といったものも後押ししていた。財政の悪化を国民が危惧し、その懸念を共有することによって、財政再建の必要性が理解され、それが政権維持にも繋がるとともに、痛みを伴っての改革を国民が支持することとなった。
小泉政権下の日本でも同様のことが見受けられた。痛みを伴う財政構造改革に国民が理解を示したことで、改革に向けて強いリーダーシップを維持することができた。とはいえ、まだ改革は始まったばかりとも言える。小泉政権で改革を担っていたひとりである安倍氏が次の首相となるなど、カナダと同様に日本でも財政構造改革路線は継続している。
フレアティ財務相は会見において「支払いを先送りしても将来は税収で埋めるしかない。つまり自分の子供を抵当に入れて借金をするのと同じだ」との発言があった。日本ではさすがにここまで比喩した発言はあまりみられなかったものの、国民に財政再建の理解を求めるにはこのぐらいインパクトのある発言があってもしかるべきか。
フレアティ財務相はカナダにおける「政府債務の利子が年十億円カナダドル以上節約できたら、同等の額を個人の所得減税に振り向ける制度」についても言及している。これをそのまま日本に当てはめることは難しいかもしれないが、たいへん面白い制度である。なんといっても日本では巨額の政府債務減らしには最後には増税しかないというのが専門家と言われる方々の声なのであり、カナダはまさにこれとは正反対の「減税こそ最善策」としている。
安易な増税論は参院選などを控えて封印されているとも言われる。参院選でもし自民党が勝利すればまたもや増税論が強まるのだろうか。債務が巨額だから増税しかないという安易な考え方こそ国民は注意すべきものである。
もうこれ以上削減されたら、自分たちの立場が危ないという人たちもまだまだ多いのであろう。しかし、他の国の様子を見れば、違った風景も見えてくる。財政再建に必要なのはまず最大の努力と知恵であり、安易な増税ではないことはそろそろ国民も理解し始めていることは安倍首相も認識しておいたほうが良さそうである。