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「市場との対話」


 市場との対話、そして政府との対話については日銀に関わらず、世界の中央銀行にとっても大きな課題となっている。米FRBはマエストロと呼ばれたグリーンスパン前議長の金融政策への舵取りが見事であったと認められることから、市場や政府から全面的な信頼を得た。しかし、それも1987年8月に議長に就任してから2か月後に起きたブラックマンデーを巧みな手綱裁きで乗り切るなどの実績が背景にある。その議長職を受け継いだバーナンキ議長も、利上げ継続後、その停止のタイミングなどによって、うまく米経済をソフトランディングに導き、インフレを抑制してきたと評価されつつある。もちろんここにきてのサブプライムローン問題などの住宅市場の問題など出てはいるが、米経済全体に大きな影響を及ぼさないとの見方も強い。これによってバーナンキ議長に対して批判といった声も聞かれない。

 ECBのトリシェ議長も就任後初めての金融政策となった2005年12月の利上げとその後の利上げ継続については、市場や政府からは大きな批判といったものも聞こえず、「金利の正常化」を進めている。ECBについては加盟諸国のそれぞれの経済環境など異なっているなど、それぞれの国の事情といった要因からなかなか意見の取りまとめも難しいようにも思えるが、トリシェ議長の手綱裁きも結果を見るとなかなか見事なものとなっている。

 日銀は2006年3月にゼロ金利政策を解除し、同年7月に量的緩和政策を解除した。この際には市場との対話を通じて、それぞれの解除を織り込ませることによって波乱なく実施されてきた。しかし、それでも市場内においても解除は時期尚早との声も燻っていたことも確かである。小泉政権から安倍政権に変り、追加利上げのタイミングを探っていた日銀は、足元の経済指標などの一時的な悪化などにもよって、日銀内部はもちろん政策委員それぞれの見方に微妙な変化が生じた。ここに政治的な介入を招いてしまった隙が生じたとも思われる。

 市場との対話において必要とされるのは、日銀と市場との信頼関係にあると思う。その日銀が市場に向けて見方を伝えるには、総裁を含めて政策委員の講演や記者会見などを通じて行なうとともに、マスコミを経由してのものもある。昨年12月と今年の1月の金融政策を巡って、市場の見方が収斂されずに揺れ動いたのは、このマスコミを経由してのノイズも働いたことも大きい。情報元が日銀なのか政府関係者なのか不透明なものからマスコミも利上げの在るなしを大きく取り上げた結果として招いたのは日銀への不信感といったものではなかったろうか。

 FRBもECBも政府との関係にはこれまでも苦慮している。しかし、いろいろな経験を通じてそれぞれの距離感といったものをうまく計ってきているように思う。日本でも12月と1月の金融政策を巡る動きは、結果としてみればひとつの教訓ともなったのではなかろうか。政府関係者からの批判といったものも抑えられ、マスコミも静かに会合結果を見守っていた。市場も追加利上げをある程度織り込んでいたことで、利上げが決定されても大きな波乱はなかった。

 須田審議委員は1月25日の講演で次のような発言をしている。「今後、日本銀行、市場、マスコミが学習を重ねることで、政策先行き予測の乱高下は次第に回避できるようになると期待しています。」。ここにはあえて加えていなかったが、今後、日本銀行、市場、マスコミそして政府関係者も含めて学習を重ねて行くことで市場との信頼を回復し対話もスムーズに行くものと期待したい。
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by nihonkokusai | 2007-03-20 13:13 | 日銀 | Comments(4)
Commented by toshi at 2007-03-21 03:29 x
こんにちは。先日のウェブセミナーはかなり勉強になりました。
ありがとうございました。
さて、割引短期国債の金利が変な状態になってます。
3ヵ月→0.62%
6ヵ月→0.61%
一年→0.59%

自分は今年からTBの金利を追い掛け始めたのですが、こういうことってよくあるんですか?
金利が逆イールド状態になると不況のサインと言われてるので気になります。

また、セミナーやってくださいね。
Commented by 貧乏人 at 2007-03-21 06:25 x
マスコミには期待薄。
マスコミといっても利益を出さなきゃいけない一企業ですからね。
ここ30年近く金融市場と報道を見てますが(かなり遠めに)、なにも期待するものなし。
かえって混乱することも、この前の1月の日銀金融政策の記事のように。
現代のTVニュースなどは食い物と芸能が中心のような番組まであり、とてもニュースとは言えないし。
おそまつ!
政府、日銀ともに、マスコミに頼らない対話の手段を考えた方がよさそうです。
マスコミにとって必要な言葉だけつまみ食いして、一般の人に間違った意味で伝わるのはこまります。
まるで素人予想のような記事の一般紙、なんとかしてほしい。
先日の日経の「東証が日興上場廃止」も、調べたとはいえ「憶測記事」だし。
どこも「予想屋」になっていて、「事実」がどこに書いてあるのか分からない。
Commented by nihonkokusai at 2007-03-23 17:03
toshiさん

先日のセミナー聞いていただいたのですね。
ありがとうございます。

今日の債券の調整で、ややイールドカーブの歪みも修正されていくのではと期待してます。
Commented by nihonkokusai at 2007-03-23 17:04
貧乏人さん

マスコミの報道のあり方、見直すべきとも思います。
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