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「量的緩和解除から1年」


 2006年3月9日に日銀は量的緩和政策を解除し、それから1年の月日が流れた。2006年7月14日には誘導目標値となった無担保コール翌日物金利を 0.25%に引き上げ、所謂ゼロ金利政策を解除した。この際に公定歩合という名称から、「補完貸付制度の基準金利」と改められたロンバート金利についても、0.4%に引き上げられている。ゼロ金利解除については全員一致で決められたものの、この補完貸付制度の基準金利の0.4%への引き上げについては、 6対3の賛成多数での決定となっていた。反対したのは須田委員、水野委員、そして野田委員。反対理由は無担保コールレートとのスプレッドをもう少し拡大すべきというものであった。

 市場でも補完貸付制度の基準金利については0.5%に引き上げられるのではないかとの見方も強かった。事前の新聞報道で0.4%の可能性も指摘されていたことで、決定事項に対してはさほど影響はなかったものの、3名の委員は0.4%ではなく0.5%にすべきとの主張ではなかったかと思われる。すでにお気づきかと思うが、この須田委員、水野委員、そして野田委員は2007年1月の金融政策決定会合において、現状維持との議長案に対して反対した。

 2007年2月21日に、日銀は追加利上げを実施した。誘導目標と無担保コール翌日物金利を0.25%引き上げて0.50%としたのだが、この際に補完貸付制度の基準金利については0.75%と0.35%引き上げられている。

 2007年2月の追加利上げに対しては、8対1の多数決によって決定されたが、反対したのが岩田副総裁であった。一枚岩とも言われた執行部の票が割れるという事態となったが、これもある程度事前に予想されていたことでもあり、大きな混乱といったものも生じることはなかった。ただし、この執行部の票が割れたことによって、今後は政策委員それぞれの一票にさらに重きが置かれるようになろう。

 4月4日に任期満了となる春審議委員と福間審議委員の後任には、三菱商事の亀崎英敏副社長と商船三井フェリーの中村清次社長が内定している。産業界を代表する2人の新審議委員はどのような考え方をするのか、といったものも今後注目されるとみられる。

 この1年間の日銀の金融政策における状況から見て、須田委員、水野委員、そして野田委員が正常化に向けての姿勢を強めていることが明らかとなり、その反対側に足元経済や物価動向も慎重にみるべきとする岩田副総裁が対峙する構図となっているかと思う。総裁も正常化に向けての姿勢に近いとも思われるが、武藤副総裁ともどもあちらこちらに目配りしながら、今後の政策についても模索していくものとみられる。

 この一年間の日銀の動きにあって、福井総裁の村上ファンド拠出金問題に加えて、12月や1月会合前の中川秀直自民党幹事長などによる明らかな利上げ牽制といった動きもあり、日銀への信認といったものがやや崩れかけた。しかし、2007年2月の決定会合では政府からの牽制といったものも鳴りを潜め、マスコミも観測記事といったものは手控えた。ここにはいったい何があったのか、これは当事者でしかわからない何かが作用していたようにも思われるが、日銀の独立性といったものも尊重すべきという意思も働いた結果であると素直に受け取りたい。崩れかけた信認を立て直すのもたいへんだが、これも今後の日銀にとりひとつの大きな仕事となろう。
by nihonkokusai | 2007-03-12 10:41 | 日銀
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