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「ラト専務理事の警告」


 2月26日に、国際通貨基金(IMF)のラト専務理事は、ハーバード・ビジネススクールの夕食会でのスピーチにおいて、円キャリートレードの増加について警告していた。ラト専務理事は、ブラジルやトルコなどへの資本流入や、韓国からラトビアまで多くの国々での円建て住宅ローンの増加といった影響を指摘し、キャリートレード全体の規模は極めて不透明だと語っていた(ロイターより引用)。

 日本からの資本流出の増加に言及し、「金融市場の国際化、また現在のボラティリティーが低い状況や金利差が大きい状況を反映している。ただ、これは為替レートの不均衡の定着化につながる可能性があり、そうなれば世界的な不均衡を悪化させる」との考えを示していた。

 そしてラト専務理事は、突然資本の流れが逆転すれば、さまざまな金融市場や国に影響を与える危険性があると警告していた。さらに「日本の金融政策がさらに正常化すれば、このような状況はやがて変化するだろう。しかし、変化にはある程度時間がかかる」と指摘もしていたのである。

 このラト専務理事の警告した事態は、この発言直後に現実のものとなった。上海株式市場での急落をきっかけとして世界的な株式市場の急落につながり、2月26日に18300.39円まで上昇していた日経平均は、28日からの急落によって3月5日には16532.91円に下落した。その間の下げ幅は1767.48円と1割近い下げとなっていた。

 今回の世界的な株式安連鎖の発端は28日の上海株式市場の急落によるとの見方が強いが、それとともに26日にグリーンスパン前FRB議長が「景気後退後の期間がこれほど長期化する場合、常に次の景気後退の要因が集積する。すでにこの兆候が見え始めている」としたうえで、年末までに景気後退局面に入ることが「あり得る」との見方を示したことも大きな要因とも見なされてもいた。世界経済を支える米国経済の先行き不透明感の強まりも、サブプライム住宅ローンへの懸念とともに今回の株下落の複合的な要因のひとつともなっていた。

 今回は世界的な株安とともに円高が急激に進んだことで、円キャリートレードの巻き戻しといったものが指摘されていた。円キャリートレードがどの程度の規模となっているのか、現実に巻き返しの動きがあるのかといったところも不透明でもある。しかし、多かれ少なかれあったことは事実であろうが、それとともに日本の個人を含む投資家による資本流出もかなりの規模ともなっていたはずである。

 中国株やインド株を組み込む投信がブームとなり、より高金利を目指しての外債投資といったものも盛んとなっている。販売業者にとっても手数料収入を得られることもあり、積極的な販売を行なっていたとみられる。1500兆円とも言われる個人資産の一部でもこういった海外資産に向かえば、市場規模と比較して過剰な資金が流れる結果ともなりうる。状況はやや異なるが上海株式市場の急落も、経済成長に伴っての中国国内の大量の余剰資金が株式投資に向かった反動ともいえるのではなかろうか。

 ラト専務理事も指摘していたように、日本の金融政策がさらに正常化すれば、このような状況はやがて変化するものとみられる。突然資本の流れが逆転するとどのような結果を招くのかを今回の世界株安連鎖はまざまざと示した。今回の動きは一時的なものであるとみられるが、資本の流れに微妙な変化が見え始めているのも確かなのかもしれない。しかし、まだまだ日本の国内金利は低いことも事実である。とはいえ、特に日本の個人投資家にとって投資のリスクといったものをあらためて再認識させる出来事でもあったかと思う。
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by nihonkokusai | 2007-03-06 10:15 | 債券市場 | Comments(0)
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