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「ひび割れたのか一枚岩」


 「日銀の金融政策を決定する政策委員の中にあって、特に日銀の総裁と副総裁を合わせた3人は執行部と呼ばれる。そしてまたこの執行部は「一枚岩」と表現されることがある。日銀の金融政策を決定するのは、この執行部の3人に審議委員の6名を加えた9名の政策委員による多数決で行われる。この多数決においては執行部の票が割れることは考えられない。これについては、総裁と副総裁の意見や見方が本来異なるはずで、おかしいのではないかとの意見もあったが、執行部の3人は日銀を代表する立場にもいる。このため、途中で意見を戦わせることはあったとしても、日銀がいざ動く際には同じ方向に向く。」

 上記は私が2005年9月に書いたものであるが、どうやらこの前提が壊れかけているようである。もちろん執行部の票が割れてはならないといったことが日銀法とかで決められているわけではない。しかし金融政策の変更という大きな影響力を持つ決定に際してあまり意見が分かれるようでは決定されたものの重みが異なってしまう。たとえば米国のFOMCでも多数決が建前ながらも、長く事実上全会一致が「原則」となっていた。ただし、このFOMCの原則もここにきて反対票が出てきたことで崩れている。

 1月18日の決定会合後の記者会見において、福井日銀総裁は次のような発言をしている。「会合の場においては、総裁、副総裁2名を含め9 人の委員はそれぞれ独立の立場の9人の中の1人ということで、それぞれはお互いに制約し合わないという意味で独立した1人1人が9人のメンバーを構成しているとご理解頂きたいと思います。今回はたまたま総裁、副総裁の3人は現状維持の方向で揃っておりましたが、理論的に言えば、この3人の意見が違うということも将来的にはあり得ます。」

 しかし、新日銀法が1998年に施行されてからの金融政策決定会合で途中での議論はさておき、結果として票決において執行部の票が割れたことはないはずである。この会見での総裁の発言は、ある意味一般論でもあり特に意味のあるものではなかったかもしれない。しかし、この発言をベンダーを通じたフラッショ記事で初めて読んだ際に、近い将来に執行部の票が割れる可能性があるのではないかと強い懸念も抱いた。

 1月19日の日経新聞の記事には『ある日銀関係者は「副総裁の岩田一政は当初から1月利上げに消極的だった」と証言する。福井はもう一人の副総裁、武藤敏郎を含め、執行部が一枚岩になれるかを瀬踏みしたとされる』とある。

 市場でも今回、副総裁の2人が利上げには慎重ではないのかとの見方が出ていた。利上げの有無を巡ってのマスコミ報道によって市場が翻弄された場面もあったが、この執行部の意見が取りまとめできるかどうか判断がつきかねたことなどもその要因ではなかったろうかとも思われる。

 副総裁の慎重論、つまりは利上げ反対の背景は純粋に景気・物価を見てのものといったものの他にもいろいろと憶測も出ているが、とにかくこの執行部の一枚岩にひび割れが入りつつあるようにも見受けられるのである。12月の決定会合の見送り決定以来、明らかに日銀の金融政策決定プロセスに変化が生じているように思われてならない。

 日銀の金融政策の変更の際に、もうひとつ決め手となるものが議長提案の有無である。議長でもある総裁が議長提案を出すということは、執行部3人とともに6人の審議委員の過半数がその提案に賛成するであろうとの状況において行われるはずである。もし仮に議長提案が否決されたり、金融政策変更に絡んで他の委員の提案が可決されたりしたならば、総裁の信任が失われることとなりかねず、その後の金融政策に対して支障をきたすばかりでなく、日銀全体の信任にも関わる。

 今回の利上げの有無を巡っては、政府・与党との関係が注目されているが、それとともにこの金融政策の決定プロセスにこれまでにない不安定な要素が入りこんできていることも確かではなかろうか。
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by nihonkokusai | 2007-01-23 09:56 | 日銀 | Comments(0)
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