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「証券税制の優遇措置の継続を希望」


 本日の日経新聞では証券税制の軽減措置を巡って、財務省と金融庁が火花を散らしていると伝えている。廃止をうたう財務省に対して金融庁が猛反発しているそうである。現在は株式譲渡益や配当に適用する税率は10%に押さえられている。来年末からこの優遇措置の期限が切れる。これに対して金融庁は延長を要望しているが、財務省は預貯金などの利子に関わる税率の20%に戻す方針のようである。政府税調も答申に特例廃止を盛り込んでいる。

 ここで争点のひとつとされているのが「軽減税率は金持ち優遇」という議論である。証券税制の優遇措置を巡っては、自民党と公明党が金融庁と財務省と同じようにガチンコ勝負となっていると12月4日の朝日新聞も伝えている。

 入力ミスによって何億円も儲けた個人などを優遇するのか、といった議論はあくまで週刊誌的な観点であり、個人投資家がそうそう簡単に株で儲けられるわけではない。プロですら相場で儲けることが難しいことは、14年間のディーラー経験のある私もよく知っているつもりである。それよりも「軽減税率は金持ち優遇」ということで廃止をすべきではないと考えている。

 「全所得者のうち株式や投資信託を保有する人は12%だが、富裕層(金融資産1億円以上5億円未満)に限れば39%、超富裕層(同5億円以上)では56%に上る」(朝日新聞)といったデータが「軽減税率は金持ち優遇」のひとつの根拠となっているようだが、そもそも株式や投資信託は金持ちが持つものといった認識に誤りがある。

 もともと証券税制の優遇措置については2003年4月に日経平均が8000円を割り込んでいた際に、この低迷する株式市場をてこ入れし、景気を活性化させる目的で導入されたものである。その後株価は上昇し続け、2006年3月には日経平均は17000円の大台を一時回復するまでに至った。その意味では「株式市場が回復したことなどから軽減措置の役目は終えた」と判断した税調の主張は正しいと思われる。

 しかし、この株価の上昇は証券税制の優遇措置による側面よりも、米国や中国の景気回復にともなって日本経済も回復基調となってきたことが最も大きな要因である。確かに証券税制の優遇措置もあって個人投資家がかなり増加して来たことも確かであるが、ここには個人が自宅から簡単に株式売買ができるようになったインフラの整備やそれに応じた取引所のシステム増強といった要因も絡んできている。

 ただし、個人の売買額は増えているが、株式の保有額といった面からはまだそれほど大きく伸びきているわけではない。株式投資信託も順調に残高を伸ばしてきているが、まだまだ「貯蓄から投資へ」の動きは過渡期である。政府も「貯蓄から投資へ」を推し進めているのなら、全所得者のうち株式や投資信託を保有する人が金持ちばかりという状況自体を変えなくてはいけないはずである。もし、証券税制の優遇措置が廃止されればこの流れに水を差してしまいかねない。

 以上のことから、当初の目的とは異なってはしまうが、「貯蓄から投資へ」の流れをしっかりとしたものにするという目的のためにも、まだ証券税制の優遇措置の廃止は早いと思う。私は今年になって
「投資信託と個人向け国債がよ~くわかる本」
「最新金融の基本とカラクリがよ~くわかる本」という2冊の本を出させていただいた。これらの本の原稿を書いていて痛感したことが、「貯蓄から投資へ」の動きははじまったばかりではあり、そしてこの動きは現在の日本の経済や社会構造の変化によって、すでに避けられないものとなっているという点である。これからの個人の資産運用には、どうしても投資信託や株式などのリスク商品である程度の運用をせざるを得ない。投資信託や株は金持ちが保有するもの、との認識から、一般人が保有しているものとの認識に変化してきてからはじめて、この証券税制の優遇措置を廃止してほしい。
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by nihonkokusai | 2006-12-06 10:28 | 投資 | Comments(0)
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