牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

「平成18年第24回経済財政諮問会議議事要旨より」


第24回経済財政諮問会議議事要旨より、福井日銀総裁の発言内容をピックアップしてみたい。

「日本銀行では展望レポートと称して4月と10月の年に、ややロングランな経済・物価の見通しを出している。10月31日に最新の展望レポートを出した。 (この中で)実体経済だが、日本経済は持続可能性の高い成長軌道に乗っており、今後もこの2年度間を展望する限り、息の長い拡大を続けると予想している。物価については、これまでの経済の回復により、需給ギャップが需要超過幅を緩やかに拡大するという局面に入っている。一方、ユニット・レーバー・コストからの物価押し下げ圧力が減じてきているので、例えばCPIについては、2007年度にかけて前年比のプラス幅が、ゆっくりだが次第に拡大していくと予想している。今申し上げた見通しは、日本銀行が最新の判断をした標準的な見通しだが、この標準的な見通しは好ましい見通しだという評価を加えている。つまり、我が国経済はこういう推移で行けば、物価安定のもとでの持続的な成長を実現していく可能性が高い、とポジティブな判断を加えている。」

「標準シナリオが順調に推移していく蓋然性が非常に高いが、よりロングランに見ると、もしかすると起こってくるかもしれないリスクがある、としている。もしそういうリスクが起これば結構コストが高い。そういうリスクをあらかじめ明示しているということである。1つは、金融政策面からの刺激効果が一段と強まり、中長期的に見ると、経済活動や物価の振幅が大きくなるリスクがあるということ。もう1つは、逆に景気拡大や物価の上昇が足踏みするような局面も考えられる。ただこの場合に、過去10年の間に大変心配したような物価下落と景気悪化の悪循環に転化するリスクは小さくなっているという評価を加えている。」

「こういう標準的な見通しのシナリオに沿って、これから経済が本当にそのとおり動くかどうかということを、日本銀行は必死になってチェックしていく。市場も市場外の皆さんも、こういう基準で評価し続けていただければ、日本銀行の政策の方向性について認識の不一致が出にくくなる。特に、マーケットにおいては、市場参加者が自らの情勢判断というものを市場金利という形で反映してくるので、今後の市場金利の出方を通じて、日本銀行の政策金利についてのコミュニケーションを行うことができる。」

「そして先行きの金融政策の運営方針だが、望ましい標準シナリオどおり経済が推移していく限り、日本銀行としては、早めに金利を引き上げることによって景気拡大の芽を摘むという考えはとらない。逆に金利政策のタイミングが遅過ぎて、経済が不必要に加速することによって先行きの景気の波を大きくするということも避けたい。」

「標準シナリオどおり経済が動く限り、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持しながら、経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に、早過ぎず、かつ遅過ぎず、テンポとしてはゆっくりと金利水準の調整を行うことになるという考え方を示している。」

「なお、日本経済の中長期的な課題について、政府もイノベーションを軸に経済成長力そのもの、潜在成長能力を上げていこうという御方針である。日本銀行もこれは全面的に支持しているが、これからその施策が実を結んで潜在成長能力が上がってくれば、それはそのまま現実の経済成長として実現していきたいということにつながる金融政策の方針である。また、人口減少という困難な問題に立ち向かう、あるいは財政再建を着実に実現していく、その経路とも整合的な金融政策の枠組みとして打ち出しているつもりである。」

「企業収益の水準が非常に高く設備投資が強い。一方、企業収益の水準が高いのに、賃金の伸び率が十分上がってこない。この点について、やはり企業は非常に厳しい国際競争にさらされており、今後とも国際競争には絶対勝っていかなくてはいけない。したがって、企業収益を十分上げてイノベーションを施し、必要な設備投資は外国の企業に負けないように早いタイミングでやらなくてはいけない。一方、諸コストは、今後とも極力抑制していかないと競争力を保てない。コストの中で一番大きい人件費に対して慎重だと、こういう構図であると理解している。」

「しかし、雇用が増え、労働市場がタイトになってきている。しかも、質の高い労働力を確保したいということで、正規労働者の雇用が増えるというように変わっている。賃金も、まずボーナスで払うが、いずれ所定内賃金の上昇に結びつくというように、タイムラグがあると見ている。八代議員から、日本銀行は設備投資が強くなるリスクを強調し過ぎていないかという御指摘があった。ここで掲げたリスクは、今見えているリスクではない。現在の状況では、標準シナリオどおり好ましい経済が実現するだろう。そのとおりになるかどうかよく見ていただきたい。しかし、今見えていなくても、日本銀行があまり安心し過ぎて金融環境が甘いままで行くと、設備投資だけでなく、資産価格その他の面で思わぬリスクが出てくる。それを、出てきてからたたくのではなく、早めに意識しておこうという程度の話である。伊藤委員が御指摘の物価について、ヘッドラインCPIで物価安定の理解をしているのは、あくまで中長期の概念である。短期的に、物価がインフレの方向にどれぐらい動いているか、逆にデフレに逆戻りしないかは、様々なコアCPIや他の物価指標を総合的に判断していく。」

以上のことはこれまでに何度も総裁自信から述べられていることである。まとめると、日銀の標準シナリオでは、日本経済は物価安定のもとでの持続的な成長を実現していく可能性が高いとポジティブな判断をしている。これを前提にしたリスクは「金融政策面からの刺激効果が一段と強まる」場合をまず置いている。これは金融緩和緩和に伴う刺激効果が強まってしまう場合を想定している。2つめのリスクは、標準シナリオどおりには回復しない場合である。ただし、過去10年の間に大変心配したような物価下落と景気悪化の悪循環に転化するリスクは小さいとデフレスパイラルが再現される可能性を否定している。大きな構造的な変換が日本経済で起きており、負のの連鎖からは逃れているとしているものと思われる。ただし日銀もその動きが確かなものかを「必死になって」チェックしていくとしている。市場でも同様なチェックを行っていることで市場と日銀の認識はいずれ縮まるとしている。この点は市場が目先の指標を意識していることもあって認識のズレの修正はかなり難しいものがあると思う。

雇用の増加からの賃金上昇波及プロセスについては従来型の経済モデルなどもあまり通用せず、個人消費が指標上上向いてこないひとつの要因ともなっている。ただしもこの個人消費が横ばいならばともかく落ち込みが続いているというのは実感とは異なっているようにも思われる。「金融環境が甘いままで行くと、設備投資だけでなく、資産価格その他の面で思わぬリスクが出てくる。それを、出てきてからたたくのではなく、早めに意識しておこう」というのがひとつのフォワード・ルッキングということかと思うが、追加利上げについても、こういったことが意識されてのものかとみられる。
[PR]
by nihonkokusai | 2006-11-09 15:40 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー