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「日本の金利は本当に上がるのか」


 日銀は2006年3月9日の金融政策決定会合において、2001年3月から5年あまりにわたって続けた量的緩和政策の解除を決定した。この量的緩和政策とは、ゼロ金利政策により金利をゼロ近辺に誘導してもまだデフレ脱却への動きを見せなかった日本経済の活性化に向けて、異例ともいえる究極の緩和政策である。民間金融機関が日銀の当座預金に置いている残高を、決められた額である6兆円程度に対して最終的には30兆円から35兆円になるようにと日銀は積極的な資金供給を行った。

 この究極の日銀の金融政策により、銀行など金融機関の資金繰りは楽になり、金融システム不安が解消に向かうとともに、日本経済回復やデフレ解消に向けてのひとつの原動力ともなった。そして、米国や中国の経済拡大などを背景に日本でも景気が回復基調となっていた上に、量的金融緩和解除の条件としていた消費者物価指数が前年比プラス基調となってきたことで、日銀は異例とも言われる量的緩和政策の解除を行った。

 これにより金利に乗せられていた大きな重石を取り除くこととなり、短期金利も少しずつ金利がつくようになった。そしてさらに日銀は7月14日にゼロ金利政策も解除したのである。

 日銀が異例とも思われる2つの政策を解除してきたことで、今後は緩やかながらも金利は上昇傾向に向かうものと考えて良いかと思う。ただしそのペースについては、物価がまだ安定していることから、極めて緩やかなものとなることが予想されている。

 日銀は半年後に発表する展望リポートと言われるもので先行き予想をしているが、消費者物価指数を含めた物価に関しては、「先行きについても、景気の拡大が続く中で、マクロ的な需給ギャップが需要超過で推移していくと考えられることから、物価のプラス基調が続いていくとみられます。ちなみに、短観や各種サーベイ調査の結果をみても、企業や家計が、先行き物価が上昇していくとの見通しを持っていることを示しています。」(京都府金融経済懇談会における武藤副総裁講演より)との見方をしているものとみられる。

 10月13日の日銀金融政策決定会合の後に行われた日銀総裁の記者会見において、福井総裁は「年内利上げの可能性否定できない」とし、あらためて年内利上げの可能性に含みを持たせたものとなったが、年内利上げの可能性についての総裁発言は今回が初めてというわけではない。7月31日に行われた時事通信との単独会見においても、福井総裁は追加利上げの時期について「年内はないとまでは言っていないのが真意だ」と述べたことが伝わっている。さらに先週の武藤副総裁の会見においても「クリスマス商戦を見極めないと判断できないかどうかについては、米国の消費動向を占ううえで重要なものと理解しているが、それの見極めがないと、政策展開ができないという考え方を採っているわけではない」とし年内利上げは否定していない。

 福井総裁は追加利上げのタイミングについては予断を持っていないとの発言を繰り返しているが、懸念されていた米国経済が住宅市場の底打ち感の強まりなどによって、ソフトランディングするといった見方が強まっている。日本経済についても日銀短観などを見る限り回復基調を続けていると見てよいと思う。 このため、早ければ12月もしくは1月の金融政策決定会合にて追加利上げが実施される可能性は強いと予想される。一時は債券市場内部でも年内利上げ派が一時急減していたものの、ここにきて再び年内利上げを指摘する声も高まっていることも事実である。

 ただし、仮に年内に日銀が無担保コール翌日物の金利の目標水準を0.5%に引き上げたとしても、そこからの追加利上げにはさらに時間をかけてくるとも予想される。来年度の基準が変更された消費者物価指数の予想も1%程度までの上昇はなかなか見込みづらい。0.5%以上の追加利上げをするには、消費者物価指数もやはり前年比0.5%以上の伸びも必要になると思われるためである。

 これまでの物価の上昇は極めて緩慢であり、急速にインフレが台頭するといった環境下にもない。実際に原油価格が急騰してもそれによる影響はかなり限られたものとなっていたぐらいである。

 これは個人投資家もある程度予想しているものとみられ、たとえば個人向け国債の売れ行きなどを見ても、金利が上昇基調となっているにも関わらず、10年の変動タイプよりも5年の固定タイプが売れている。これは期間の問題や変動タイプの仕組みがわかりづらいという面もあろうが、今後の金利上昇はかなり緩やかなものとなるといった見方も反映しているのではないかともみられる。債券市場関係者からみると変動の方が有利との声も実際には多い。しかし、現実に量的緩和解除やゼロ金利解除を実施しても長期金利の上昇はせいぜい2%止まりとなり、ゼロ金利解除後にはむしろ一時1.6%にまで低下していたぐらいである。

 長期金利が低位安定している背景としては、国債の需給が締まっているという側面もある。一時、国債暴落などが騒がれた時期もあったものの、日本国債への信任は強く投資家も引き続き資金を国債に投じているとともに、財務省による国債管理政策によって国債発行も順調に行われている。

 ファンダメンタルズによっての金利の急上昇は見込めず、さらに国債への信任低下などによる長期金利の急騰も考えづらい。現状の長期金利は 2%超えがせいぜいかとみられるが、日銀の予測どおり物価がさらに上昇となれば無担保コールの誘導目標を1%程度まで引き上げてくる可能性は否定できない。そうになれば長期金利の上昇もあるとみられるが、せいぜい3%近辺止まりかと予想している。
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by nihonkokusai | 2006-10-26 17:08 | Comments(0)
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