「お母様」
夏休みで江の島に行っていたときのことである。新江の島水族館の売店に入った際に、目の前にいた小さな女の子が「お母様」と呼んでいたのにびっくりした。さすが湘南、というか上品なイメージが強い横浜を抱える神奈川県ならでは、というより普通ありえない。今時そういった呼び方をさせているというのはそれなりの上流階級にいらっしゃる方なのか。しかし、そういった方が新江の島水族館でお土産を物色することも考えづらい。それでも、聞き間違えではなかったことはのちほど家族がやはりそれを聞いていたことでも確かであった。
「お母様」という言葉はそれはそれで上品な呼び方でもあり嫌いではない。現在掲載されている日経新聞の私の履歴書を書かれている家元のご家庭などでは今でもありそうである。しかし、現在の履歴書に書かれていることは戦争に絡んだ悲惨な体験である。家元といった家庭で育ちながら、あのシベリア抑留に耐えてこられたというのも強い体力や意思、そして知恵があってこそのものであるとも感じた。
それはさておき、私も小学校4年生までは横浜に住んでいたこともあってか、たしかにまわりにお坊ちゃん、お嬢様らしき子供もいたように記憶している。幼稚園で一緒に通った女の子も一人はお嬢様であったそうだ。お宅にはグランドピアノなどがあったと聞かされていた。そういった絵に描いたような「お坊ちゃま」や「お嬢様」は存在しているのかもしれない。現在、自分の住んでいるところでは間違っても「お母様」と呼ぶような子供は周りにはいない、はず。「とうちゃん」「かあちゃん」が通称のような田舎でもある。私もちょっと田舎に長く暮らしすぎていたために「お母様」に過剰反応してしまったのかもしれない。私も娘には「お父様」と呼ぶようにしつけるべきであったか。