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「日銀による国債買入の減額はあるか」


 日銀のホームページによれば、2001年3月に導入された量的緩和政策において、日本銀行は、資金供給のためのオペレーションの未達(いわゆる「札割れ」)が多発するケースなど、所要の資金供給を円滑に実施するうえで必要と判断される場合には、長期国債の買い入れを増額することとしている。

 ただし、日本銀行による長期国債の買い入れ増額措置は、国債価格の買い支えや財政ファイナンスを目的とするものではないと日銀は「日本銀行の国債買入オペについての考え方」でコメントしている。このため、銀行券発行残高を長期国債保有残高の上限とするという明確な歯止めも設定されている。

 すでに量的緩和政策は解除された上に、ゼロ金利政策も解除されている。日銀の保有する国債残高は減少していることもあり、当面は銀行券発行残高を超えるといったことは考えづらい。しかし、日銀が国債買入を「国債価格の買い支えや財政ファイナンスを目的とするものではない」とする以上は、現在の金額による国債買入を継続する意味合いは薄れてくる。

 ここには当然ながら本音と建前といったものも交錯しているものと考えざるを得ない。政府としてはデフレ脱却宣言も出していないうちに、ゼロ金利も解除し利上げを実施した日銀に対しては、財政面からも国債買入の減額といった「インパクト」のある決定は当面避けてほしいところでもあろう。

 1998年の資金運用部ショックについても、本来ならば運用部の引き受け額の大幅な減少が重視されてしかるべきであったが、当時は金額としてのインパクトは引き受け額に比べればさほど大きくなかった運用部による買入停止の方に影響されて、相場急落のきっかけとなっていた。

 このような前例もあることで、需給面からはさほど影響がないとは言え、一時的に国債相場に大きなインパクトを与えるとみなされる日銀の国債買入の減額といったものは、ある程度タイミングを見計らう必要もあろう。

 来年度の一般会計決算においては税収が当初予算より5兆円以上増える見込みになったことにより、新規国債発行額が当初計画より約3兆円程度減り31兆円台に減額される見通しとなっている。これは入札ペースが変らずに当初の発行計画通りとなれば、これはそのまま借換債の前倒しの増加分となる。税収増、国債減額とも事前に想定された数値に近く、相場への直接的な影響は限られよう。しかし、これによって今後、新規国債に加えて、前倒し発行の減額などによって借換債の発行の減額が見込まれるために、年度の国債発行額自体が前年度よりも減少していくことが予想される。

 上記のこともあり、来年度に関しては国債発行総額が今年度を下回ってくる可能性が高い。日銀は年内に追加利上げを実施してくる可能性は引き続き高いものと見ているが、10月以降に0.25%の利上げを実施したとしても、まだ国債買入の額を変更することは、その影響を考えると考えづらい。しかし、来年度にかけては、どこかで日銀が国債買入の減額のタイミングを模索してきたとしても、おかしくはない。福井総裁などもいずれ国債買入を減額することについてはその可能性を否定してはいない。ただし、買入減額発表による債券相場の急落、長期金利の急騰は回避したいところであろう。国債買入減額にあたっては、事前にある程度の示唆がそれとなくなされてくるものとみられ、相場への影響を極力排除した上で実施してくるものとみられる。
by nihonkokusai | 2006-08-10 13:07 | 日銀
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