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異次元緩和で長期金利が上がらぬ不思議

 日銀のいわゆる異次元緩和の目的は2%の物価目標を達成することであるが、その手段として大規模な長期国債の買入れを行うのは、イールドカーブ全体にわたって名目金利に低下圧力を加えるためであると日銀は説明している。

 今年1月に異次元緩和にマイナス金利という新たな装備をセットしたことで長期金利、つまり10年国債の利回りまでもがマイナスとなった。日銀が大量に国債を買い入れで需給をタイトにさせ、日銀が操作可能な足元金利をマイナスにしたのだから当然であろう、と思われるかもしれないが、これは実はおかしい。

 日銀が目指しているのは「思い切った金融緩和によって、デフレマインドを抜本的に転換し、インフレ予想を引き上げること」(23日の中曽副総裁の講演より引用)である。長期金利、つまり日本国債の利回りは株や為替と同様に市場で決定される。ここに市場参加者のマインドが影響していることは多少でも取引をしたことがある人であればおわかりかと思う。長期金利は日銀が強制的に決めているものではない。

 日銀の予想インフレ率を示すために岩田副総裁などはかつて物価連動国債から算出されるBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)などを持ち出していた。この物価連動債の流動性はかなり低く、その価格も一部の参加者のみで決定されるものであり、それが的確に予想インフレ率を示すとは言えないと私は主張してきたが、日銀もさすがに気がついたようで、最近はあまりBEIを持ち出していない。もちろんBEIそのものが低迷しているからという理由かもしれないが。

 そんなBEIなど持ち出さずとも人々というか厚みのある市場参加者の予想インフレ率を示すものがある。それが長期金利である。この長期金利は将来の金利を予想して動いているものでもあり、将来、物価が2%に上がると予想していれば当然、長期金利もその2%目指して上昇しなくてはおかしい。

 日銀が大量に購入するから長期金利が抑えられているも言えなくもないが、長期金利も市場で形成される以上、市場参加者のこのような予想も抑えられているとは言えない。長期金利までもがマイナスに低下しているという事実は、日銀がいくら国債を購入し、マイナス金利を導入しようが、将来物価が2%に向かって上昇するということを市場参加者が疑っているというか、信じていないということを示している。

 ただし、長期金利がかなり無理矢理抑えられている面があることも確かであり、債券市場参加者のマインドに何かしらの変化が生じ、物価が日銀の思惑通りに上がるかもしれないと認識するとなれば、債券市場の流動性が枯渇しつつあることもあり、長期金利が一気に跳ね上がるリスクも存在する。

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by nihonkokusai | 2016-05-25 09:39 | 債券市場
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