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国債の金利はどのようにして決まるのか

 日銀のマイナス金利政策の登場で金利は日銀が決めているかのように思っている人がいるかもしれません。しかし、預貯金などの金利を決めているのは各金融機関であり、債券の利回りは市場で決められています。日本における金利の形成は、戦後から長い期間にわたり規制されていたのですが、国債の大量発行をきっかけとして徐々に規制によるものから、市場に委ねられるものとなってきました。

 第二次大戦後、経済復興のために厳格な金利規制が形づくられていました。これは日本経済の復興とその後の経済成長のためには、大手企業の設備投資などのために安定的な企業の資金調達を可能にする必要がありました。そのため金融機関の金利を一定にするなどによって、間接金融を通じての安定的な金融体制が作り上げられていたのです。

 ところが、高度成長から低成長時代への経済構造の変化に伴い、規制はむしろ金融の効率性を損なうと考えられるようになりました。海外市場ではすでに金利は自由化されていたこともあり、1970年代後半から日本でも金利の自由化が推進されたのです。

 日本での金利の自由化が推進されたひとつのきっかけが、第一次石油危機による不況の影響による国債の大量発行でした。国債を購入していた民間金融機関は、引き受ける国債の金額が大きくなってきたことで、その一部を流通市場で売却する必要性が生じたのです。このときまで銀行が勝手に国債を売ることが禁じられていたのです。国としても大量の国債発行を円滑に行うためには、銀行による国債の売却を認めざるを得なくなりました。このため日本でも本格的な債券の流通市場が徐々に形作られてきたことで、転売価格が自由に形成されるようになり、これをひとつのきっかけとして規制金利の一角が崩れたのです。

 1975年以降のコールレートや手形レートの弾力化などに伴い、短期金融市場においても金利自由化が進みました。1978年にはコールレートと手形売買レートの建値制度が廃止されました。大量の国債発行に伴い自然発生していた債券現先市場も発展し、企業の流動性資金を吸収する手段として、1979年には銀行にCD(譲渡性預金)の発行が認められました。また無担保コール市場が1985年に創設されています。

 預貯金金利に関しては、米国などからの圧力によって自由化が進められ、1985年にはMMC(市場金利連動型預金)が導入され、10億円以上の大口定期預金の金利が自由化されました。1993年には定期性預金、1994年には普通預金の金利が完全に自由化されました。

 このように日本における金利は戦後から長い期間にわたり規制されていたのですが、国債の大量発行をきっかけとして、徐々に規制によるものから、市場に委ねられるものとなっていったのです。

 ただし、短期金利については日銀の金融政策によりその水準が決められています。日銀の政策金利は無担保コール翌日物の金利という非常に期間の短い期間の金利となっており、日銀の金融政策によってこの金利の誘導目標値が決められており、その誘導目標値に近づけるように日銀はオペレーションなどを通じて調節を行っているのです。

 日銀は今年1月のマイナス金利政策の導入により、短期金利の基準となる無担保コールの金利をマイナスに促すことで、国債の金利を含めて期間の長い金利にも低下圧力を加えることになったのです。日銀の大量の国債買入があるため、市場では長い期間の国債までもマイナス金利で取引されるようになりました。

 このように日銀の金融政策の動向や、その背景となる日本の経済や物価の動向、さらに日本経済に影響を与える海外の経済の動向などファンダメンタルズが、市場で形成される金利に大きく影響を与えます。国債の発行額や投資家の債券投資動向とともに、現在では日銀の大量の国債買入による債券需給への影響も非常に大きくなっています。

 そして市場、特に国債で形成された金利を基にして、国債以外の債券の金利が決定されます。国債以外の債券は主にその信用力などに応じて国債の金利からの上乗せ金利が決められ、本来であればそれが発行される際の利子となるのですが、マイナス金利の登場によってベンチマークとなる国債の利回りがマイナスとなってしまっていることもあり、適正な社債などの金利が見い出しにくい状況となっているのです。

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by nihonkokusai | 2016-04-20 18:54 | 国債
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