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量か金利かの二択だった1月の日銀決定会合

 日銀は1月29日の金融政策決定会合の議事要旨を公表した。この会合でマイナス金利付き量的・質的緩和の導入が決定したわけではあるが、何故、追加緩和が必要となったのかをこの議事要旨から見てみたい。

 「多くの委員は、このところ、原油価格の一段の下落に加え、中国をはじめとする新興国・資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定な動きとなっており、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大しているとの認識を示した」

 要するに年初からの中国経済の減速とそれも影響しての原油安による金融市場の不安定な動き、つまりリスク回避による株安と円高の対策のために、「デフレマインドの転換が遅延」との理由付けのもと、追加緩和を検討したということになる。ちなみに米国のダウ平均は17日に昨年末の水準に戻っているが、日経平均やドル円は戻り切れていない。日銀の追加緩和はどうやら市場には期待された効果は出ていないようである。

 「多くの委員は、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために、追加的な政策対応を行うことが適当であるとの見解を示した。」

 物価上昇ペースが下振れるリスクというが、日銀の異次元緩和が有効ではなかったことはすでに現実のCPIの推移でも明らかだと思うが。そもそも予防をするという以前に、物価上昇ペースそのものが現実に下振れたのは、日銀の緩和がそれでも足りなかったとの判断なのであろうか。

 「こうした議論を受けて、議長は、執行部に対し、政策対応を行う場合に採り得るオプションの提示を求めた。執行部からは、「量的・質的金融緩和」の拡大(マネタリーベースの増加幅および資産買入れの拡大)、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入、という2つのオプションが示された。」

 この部分にやや意外性があった。てっきり「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入だけを提案したのかと思っていたが、ここであらためて執行部が「量的・質的金融緩和」の拡大と「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」というふたつの選択肢を提示し、総裁の腹づもりは決まっていたとしても、あらためて決定会合でもこの選択について議論させていた。ただし、結局は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入についての議論とはなった。

 賛成派は「イールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れを継続することとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えることができるとの見解を示した。」、さらに「同じ量であれば付利を引き下げた方がポートフォリオ・リバランス効果を高め、より強い効果があるとの見解を示した」、「マイナス金利については、欧州諸国の経験から、効果や実務的な問題についても適切に運営するだけの知見は集積されており、問題を小さくしながらより効果を高めることができる」との見方が示された。

 マイナス金利導入後、金利全般により強い下押し圧力が加えられたのは事実であるが、ポートフォリオ・リバランス効果については欧州同様に、あまり動きは出ていない。さらに内外からのマイナス金利への批判も強まり、問題を小さくしながらより効果を高めることもできていない。3月の決定会合ではその批判を受けて、MRFをマイナス金利適用外にするなどの調整を余儀なくされた。

 「これらの委員は、マイナス金利の導入に当たっては、当座預金の付利金利を当初はマイナス0.1%とし、今後、必要な場合、さらに引き下げることが望ましいと述べた。」

 賛成派は総裁含めて、マイナス金利のさらなる引き下げを選択肢として置いているが、ECBはこちらも内外からの批判などもあって、マイナス金利政策は打ち止めにしている。

 そして反対派からは、「複数の委員は、「量的・質的金融緩和」の補完措置の導入直後のマイナス金利の導入が、かえって資産買入れの限界と受け止められる可能性を指摘した」との意見が出た。これは総裁は認めていないがその通りであろう。

 「このうち一人の委員は、複雑な仕組みが混乱・不安を招くこと、今後、一段のマイナス金利引き下げへの期待を煽る催促相場に陥ること、金融機関や預金者の混乱・不安を高めること、2%の「物価安定の目標」への理解が乏しいもとで政策意図に関する誤解を増幅させることなどへの懸念も示した。」

 日銀のマイナス金利導入後、不安感が強まりそれがマスコミなどで報じられることになる。

 「マイナス金利の導入とマネタリーベース増額目標の維持は整合性に欠けること、マイナス金利は市場機能や金融システムへの副作用が大きいこと、海外中銀とのマイナス金利競争に陥る可能性があること、日本銀行のみが最終的な国債の買い手となり、市場から財政ファイナンスと見做される惧れがあることへの懸念を示した。」

 この発言も的を射ている。短期金融市場ばかりでなく債券市場も機能不全に陥りつつある。流動性の意味合いからも債券市場はリスクが高まりつつある。また、イングランド銀行のカーニー総裁は各国中銀のマイナス金利導入は「近隣窮乏」環境生む恐れがあるとの見解を示すなど、米国などを含めての批判も強まっている。

 そして、最も注意すべきは国債市場が財務省と業者と日銀だけの右から左への動きだけとなりつつあり、業者も今後は日本の国債市場から徐々に手を引く懸念もある。そして、財政ファイナンスとの認識が今後より強まるリスクがあり、これはいずれ日本国債の信認にも関わってくる潜在的な問題となりかねない。

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by nihonkokusai | 2016-03-19 10:24 | 債券市場 | Comments(0)
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