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ECBのマイナス金利政策からの転換

 3月10日のECB政策理事会で決定された包括的な金融緩和策は、2014年6月の理事会で決定した包括的な金融緩和策と類似したものではあったが、今後はマイナス金利政策とは距離を置くなどやや趣が異なっていた。

 政策金利は下限金利である中銀預金金利を0.1ポイント引き下げマイナス0.4%とし、主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利も0.00%と従来の0.05%から引き下げ、政策金利の上限金利であるところの限界貸出金利も0.25%に引き下げた。

 これはマイナス金利政策の強化に見えたものの、ドラギ議長は理事会後の会見で、「今の状況ならこれ以上利下げする必要が無い」と発言した。これが当日の株式市場や外為市場では嫌気されたわけではあるが、この発言にはECBの緩和路線の変更が意味されていたとみられる。

 今回のECBの追加緩和の際には日銀の多段階のマイナス金利政策と同様の政策が検討されるのではとの観測があり、実際にそれは検討されたようである。ところが「ECBが望む限りマイナス金利政策を進めることができるとの(誤った)シグナルを市場に送ることを避けるために」採用を見送ったとドラギ総裁は述べている。

 このドラギ総裁の発言は、政策金利そのものをゼロにまでしたことで、これ以上の政策金利の引き下げは難しいことに加え、マイナス金利による欧州の銀行への収益悪化を意識したものであろう。当然ながら日本も同様にマイナス金利政策による金融機関への収益悪化が問題視されている。ただし、そうであるのならば何故、今回のECBの包括緩和にマイナス金利の深掘りも加えられていたのか。市場の緩和期待に応えるためラインナップを増やした面もあろうが、これでひとつの金利政策の打ち止め感も出したかったのかもしれない。

 今後のECBの追加緩和については、「金利政策からその他の非伝統的な金融政策に軸足を移す」とドラギ総裁は明言した。これはECBのマイナス金利政策からの転換を意味するものとなろうが、マネタリーベースの増加を目的とした日銀タイプの量的緩和政策とは一線を画するものとなろう。

 それではECBは非伝統的な金融政策としてはどのような手段を意識しているのであろうか。今回のECBの政策には資産買い入れ規模を月間600億ユーロから800億ユーロへの拡大が含まれていた。資産購入の対象には銀行以外のユーロ圏企業が発行した投資適格級の社債も加えられた。

 今後はこのような資産買入規模を膨らませる政策が意識されているとみられる。ただし、資産買い入れの期限は2017年3月までと変更してはいない。ECBはこの時間軸政策は今回は温存している。

 さらに新たな一連の条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)の6月からの開始も加えられた。これはある意味、ユーロ圏の銀行にとっては恩恵にもなることで、マイナス金利で疲労した銀行への救済策ともなる。

 ECBはマイナス金利政策からの転換を図っているが、いまのところその具体策は明確ではない。しかし、今回の包括緩和の内容を見る限り、資産買入の量と質、そして期限などの変更、さらには長期リファイナンスオペ(TLTRO)の活用などが想定されているのではないかと予想される。

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by nihonkokusai | 2016-03-15 09:02 | 中央銀行 | Comments(0)
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