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懸念される短期金融市場の機能不全

 1月29日の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入の決定において、マイナス金利の導入は賛成5反対4の僅差となっていた。反対票を投じたのは白井委員、石田委員、佐藤委員、木内委員の4人であるが、白井委員の反対に違和感を覚えた人がいたかもしれない。なぜならば同じ僅差(賛成5反対4)で決定した2014年10月の「量的・質的金融緩和」の拡大の際に白井委員は賛成票を投じていたためである(この際の反対票は森本委員、石田委員、佐藤委員、木内委員)。

 2014年10月の動きを見る限り、執行部寄りかとみられた白井委員が何故、マイナス金利の導入に反対票を投じたのか。それは自らの意見を通したためと言える。

 2014年7月23日の白井日銀審議委員の講演のなかで、白井委員は「準備預金へのマイナス金利適用」について触れている。

 このときすでにECBは預金ファシリティに適用する金利をマイナス0.1%へ引き下げ、「所要準備を超える部分」(超過準備)に対しても同じくマイナス0.1%の付利を適用していた。これに対してFRBは0.25%の付利を超過準備に適用。イングランド銀行も準備預金に0.5%のプラスの金利を適用している。

 白井委員は、中央銀行がこのようにプラスの金利を支払っている理由について説明している。たとえばマイナスの金利であれば、銀行間市場が縮小して金融機関が必要なときに市場から即座に資金調達することが難しくなる点を指摘した。

 銀行間市場そのものがマイナス金利により機能が低下する可能性がある。これは反対に日銀が大量に資金供給を行って資金がジャブジャブになった際にも起こりうる。むしろ、日銀の超過準備の付利は、2001年から2006年にかけての量的緩和時代に短期金融市場が機能不全に陥ったため、その対策として日銀は超過準備の付利を行った側面もあった。

 付利金利があると銀行間市場の金利に下限が生まれ、プラスの金利を維持すれば市場金利の変動は小さくなると考えられる、との白井委員は指摘しているが、ゼロ金利政策の時代であっても、日銀当座預金の付利金利を目安とした裁定取引などが活発化することもあり、短期金融市場は機能する。

 日銀は市場金利を大きく変動させることなく銀行間市場に十分な流動性を円滑に供給することも可能となる。これによりバランスシートを拡大する量的緩和政策をし易くなるという(付利による)利点があると、白井委員は指摘した。

 ところが日銀が超過準備の一部とはいえ、マイナス金利を導入したことにより、これらの利点が失われる懸念がある。白井委員は「その一方で、マイナス金利で期待される効果として、為替相場の減価や金融機関の貸出金利の低下等を期待する見方があります」とも指摘していたが、マイナス金利導入による弊害が優ると判断して、1月29日の決定では白井委員は反対票を投じたものと推測される。

 現実にマイナス金利の適用が開始された16日の無担保コール翌日物のレートはゼロ%にまで低下し、翌17日にはマイナスとなった。16日時点のコール市場の取引残高は前日比11兆9909億円減の4兆5360億円と、1988年11月のデータ公表以来で最低を記録した(ブルムバーグ)。これはマイナス金利に対して金融機関などのシステムの対応が遅れ、会計処理にも支障を来す事態となっていることも要因として指摘されている。短資協会によると短資取引約定確認システムは3月中を目処にマイナス金利対応のためのシステム改修を行うそうである。

 今後はシステムの対応などが整えば多少、取引高は回復するかもしれないが、取引高が大きく減少するのは避けられないであろう。そうなると、短期金融市場が前回の量的緩和時代のように、金利のスペシャリストは必要なくなり、金融機関の資金繰りはアルバイトでも担当出来ると言われた時代に逆戻りする懸念がある。これは債券市場についても同様な状態になりつつあり、短期金融市場や債券市場の機能不全も懸念材料となってくると思われる。

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by nihonkokusai | 2016-02-18 09:41 | 日銀 | Comments(0)
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