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原油安で何故、株が売られたのか

 1月28日の日経新聞には「原油安、業績下支え」と題する記事が掲載されていた。原油安の恩恵が2015年4~12月期の企業業績にも表れ始めているそうである。また、レギュラーガソリンの店頭価格が1リットル100円を割り込む地域が広がっているとの記事もあった。これは個人にも当然ながら恩恵である。都心ではあまりクルマを利用する機会はないかもしれないが、地方では重要な足となっている。

 原油安は石油関連業者の業績にはマイナスの影響が出ても、日本など原油の輸入に依存している国にとり、企業にとっても個人にとっても恩恵を被ることの方が多いはずである。ところがここにきての市場の動きを見てみると、原油価格の下落が日本を含めて株式市場の下落要因とされている。これはいったい何故なのであろうか。

 これは原油価格下落のそもそもの要因が影響している。昨年12月の人民元の切り下げにみられるように中国の景気が悪化しており、チャイナバブルの崩壊が鮮明になりつつある。昨年7月あたりからの原油先物の下落については当初、米国のシェールガスなどの影響による供給面が強調されていたが、実は新興国経済の悪化などによる需要面での後退による影響も重なっていた。

 少し遡ってみてみると、2002年あたりからの原油価格の大幅な上昇の背景に、中国などBRICsと呼ばれた新興国の経済成長があった。WTIは2002年当初に20ドル前後であったが、2008年7月11日に147.27ドルという史上最高値を記録した。ここまで上昇したのは新興国バブルを意識した動きが入っていた。

 それがリーマン・ショックなどにより、2009年12月19日に32.40ドルまで下落した。ここから再び原油先物は上昇基調となり、2011年には100ドル台を回復した。この原油先物の再上昇の背景にあったのが、リーマン・ショックや欧州の信用不安と称された世界的な金融経済危機に対する日米欧の中央銀行な過剰ともいえる金融緩和にあったとみられる。世界の資金は引き続き新興国などにも流れ、中国などの景気を下支えした。

 しかし、2014年7月あたりから原油価格が下落基調となった。これは原油の供給面による影響とともに、中国の成長などが減速しつつあったことが要因となった。さらにFRBがテーパリングを2014年10月に終了し利上げ、つまりは正常化の動きを模索したことで、資金の流れに変調が生じたことも要因となったのではなかろうか。

 中国など新興国ブームに加え、日米欧の中央銀行の金融緩和による過剰流動性相場により、新興国の通貨や株が買われるなどリスク資産に資金がシフトしていた。そのなかには2012年のアベノミクスの登場による日本株買いと円売りをセットにした動きも生じていた。

 原油価格の下落はこのような資金の流れに変化が生じたことを示している。さらに原油安は産油国経済も直撃することになる。ロシアやブラジルなどの新興国だけでなく、サウジアラビアなど中東の国々の経済や財政にも影響を与えることになり、これはオイルマネーの動きも変化させた可能性もある。

 原油安は中国やサウジアラビアなどの経済への懸念を強めさせることになり、さらに米利上げにより過剰流動性相場の終焉も意識されたことで、リスク回避の動きを強めさせ、それらが欧米の株式市場の売り要因となっていった。

 原油安とセットとなった欧米の株式市場の下落は東京市場を直撃し、アベノミクスをきっかけとした海外投資家などによる円売り株買いのポジションなどもリスク回避の動きで巻き戻されたのではなかろうか。その結果として東京株式市場は調整を余儀なくされたとの見方もできる。

 原油価格の下落はまもなく落ち着くものと予想しているが、新興国経済の悪化による影響は今後も残るとみられ。市場の動揺は当面続くものとみられる。これに対してECBや日銀が金融政策で対応できる部分はあまり大きくはないし手段も限られる。このため追加緩和に対する過剰な期待も禁物ではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-01-29 09:37 | 国際情勢 | Comments(0)
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