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ドラギマジックに種は残っているのか

 1月21日に開催されたECB政策理事会では、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.05%に維持し、中銀預金金利と限界貸出金利もマイナス0.3%とプラス0.3%でそれぞれ据え置くことを決定した。

 ドラギ総裁は会見で、新興市場国の成長見通しをめぐる不透明性の強まりや金融・商品市場の変動、地政学的リスクに伴い、下振れリスクが年初以降、再び増大したとし、3月の次回会合で金融政策スタンスを見直し、恐らく再検討する必要があるだろうと述べた。つまり、「追加緩和」の可能性を示唆した。これを市場は好感し、中国リスクや原油安などによるリスク回避の動きが反転するきっかけとなった。

 ECBは昨年12月3日の政策理事会で追加の緩和策を決定した。主要政策金利のリファイナンス金利は0.05%に据え置き、上限金利の限界貸出金利も0.30%に据え置いたが、下限金利の中銀預金金利をマイナス0.30%に引き下げた。ドラギ総裁は会見で、債券購入の期間を2017年3月まで延長する方針を示し、買い入れる資産の対象に地方債を含めることも明らかにした。買い入れた債券が償還された際に、償還金の再投資を実施することも表明した。ただし、毎月600億ユーロの資産を買い入れという規模は現状維持となった。

 この決定に対して市場は「踏み込み不足」との認識を示した。12月3日の欧米の株式市場は大きく下落し、ダウ平均は一時300ドルを超す下げとなった。ユーロ圏の国債とともに米国債や英国債も大きく下落した。米10年債利回りは2.3%台に上昇。また外為市場ではユーロが買い戻され、ユーロ円は134円近辺に上昇した。まさに「ドラギショック」といった展開となったのである。

 12月3日に決定された内容は、継ぎ接ぎではあったものの、償還金の再投資を実施するなど政策としてはそれなりに踏み込んでいたと思われる。しかし、大規模な金融緩和に慣れてしまい、この程度では期待外れとの認識が市場で示されてしまった可能性がある。

 12月18日の日銀の金融政策決定会合では量的・質的緩和を補完するためとして、いくつかの措置を発表した。7~10年であった買い入れ国債の平均残存を7~12年程度に変更するとした。量的・質的金融緩和のもとでの長期国債買入れに伴って、金融機関が保有する適格担保が減少していることを踏まえ、外貨建て証書貸付債権を適格担保とするほか、金融機関の住宅ローン債権を信託等の手法を用いて一括して担保として受け入れることを可能とする制度を導入した。ETFは3兆円の買い入れ枠に加え、新たに年間約3000億円の枠を設け「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETFを買入れる。同時に金融機関から買い入れる株式の売却完了期限の10年間の延長も決めた。

 日銀としてはこの措置はあくまで追加緩和でなく異次元緩和の補完とした。仮に追加緩和のような効果を狙ったとしても、このような手段を講じるしかないことを市場に見透かされてしまった格好となった。12月18日に日経平均先物は一時19900円近くまで上昇したが、その後大きく売られ19000円割れとなるなど値動きの激しい相場となった。追加緩和だと思ったが違ったので株は乱高下したとの見方もできるかもしれないが、市場のセンチメントが変化している点にも注意すべきであった。追加緩和、もしくはそれに準ずるものに市場が素直に反応するような地合ではなくなってきている。

 それではドラギ総裁には追加緩和としてどのような手段が残されているのであろうか。下限金利の中銀預金金利の再引き下げ、債券購入の期間のさらなる延長、そして前回手をつけていなかった資産買入規模拡大などが想定される。主要政策金利そのもののマイナス化は弊害も大きいとみられ難しい。資産買入規模拡大についてもドイツなどの反対があると予想され、大規模な拡大は現実的にも難しい。

 ドラギ総裁は、われわれは周知の通り数多くの手段を持っていると主張するが、日銀同様に規模に関しては国債買入に依存するほかなく、金利にも限界がある。手段はいくつもあったとしても市場を納得させるほどのマジックの種は存在していない。それでも何もしないよりも緩和したほうが良いという発想であるのであれば、それはそれで市場との対話をより難しくさせる可能性もある。

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by nihonkokusai | 2016-01-23 11:09 | 中央銀行 | Comments(0)
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