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日銀の物価目標達成を前提とするリスク

 日経新聞によると、財務省は2016年度予算案をもとに国の中期の財政見通しをまとめた。これによると基礎収支は2020年度に5.8兆円の赤字となり、2016年度に比べほぼ半減する見込みとなっている。ただし、これは名目3%の高成長が前提となっている。

 その名目3%の成長のさらなる前提条件となっているのが、日銀が2%の物価目標の達成である。その肝心要の2%の物価目標達成がかなり怪しくなっている。

 そもそも2013年4月に決定した量的・質的緩和、いわゆる異次元緩和によってレジーム・チェンジが起き、人々のインフレ期待を強めさせて、物価目標は達成すると日銀はしていた。この決定のタイミングでたしかに消費者物価は前年比プラスを回復し一時プラス1.5%にまで上昇した。

 これほどタイミング良く物価が上がる方がむしろおかしい。この際の物価上昇は原油価格が高止まりしていた事に加え、急激な円安による輸入物価などの上昇が要因であった。もし仮にレジーム・チェンジが発生し、マネタリーベースの増加とともに物価が上がるという岩田副総裁の主張していた理論が正しければ、外部要因等に関係なく物価は目標に向けて上がり続けていたはずである。ところが原油価格の下落などから消費者物価指数は前年比ゼロ近辺に低下してしまった。

 2014年10月には原油価格下落などにより、人々のインフレ期待の後退を阻止するとして量的・質的緩和の拡大を決定した。しかし、これも結果として円安株高には多少働きかけたものの、目標とする物価に働きかけることはなかった。

 日銀はいろいろと指標を工夫して物価の基調は改善していると主張するが、日銀の掲げた物価目標はあくまで消費者物価指数の総合であり、それは前年比プラス0.3%に過ぎない(2015年11月)。異次元緩和開始から2年9か月過ぎたが目標を達する気配はなく、消費者物価に直接影響を与えている原油価格は下がり続けている。

 黒田総裁が期待した賃上げについても、春闘が期待外れの結果に終わる公算が大きいとされている。そもそも異次元緩和が賃金上昇に影響を与える波及経路が良くわからない。日銀が思い切って国債を買えば、どうして物価や賃金が上がるのか。

 日銀が追加緩和をすればなんとなく景気も良くなり、物価も上がり、株価も上昇すると思っている人も多いかも知れないが、そうではないということを日銀の異次元緩和以降、明確にしてしまったとも言える。

 つまりピーターパンは幻想にすぎない。空を飛べる魔法の粉を日銀が持っているわけではない。日銀は空を飛べるような環境整備をしているにすぎず、飛ぶための努力をすべきは企業等であり、つまり我々である。日銀が何かをすれば何かが大きく変わる、などということは幻想にすぎないことをそろそろ気がつくべきである。

 このため、日銀による物価目標達成を前提とした名目3%の高成長といったものにも無理がある。むろん海外要因によってもそれは左右されうるが、日銀の金融政策は成長の土台にはなりえても、エンジンとなるわけではない。計算できないものを前提に目標を立てることにも問題はあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-01-21 09:41 | 日銀 | Comments(0)
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