日銀の国債買入の限界
2014年10月の量的・質的緩和政策の拡大では、資産買入れを拡大し、長期国債買入れの平均残存年数を7~10年程度に長期化した。長期国債については保有残高が年間80兆円(約30兆円追加)に相当するベースで増加するよう買入れを行うこととなり、年間国債発行額の9割を買い入れることになった。
そして、2016年12月の金融緩和の補完措置により、7~10年であった買い入れ国債の平均残存を7~12年程度に変更するとした。さらに金融機関が保有する適格担保が減少していることを踏まえ、外貨建て証書貸付債権を適格担保とするほか、金融機関の住宅ローン債権を信託等の手法を用いて一括して担保として受け入れることを可能とする制度を導入した。この措置は、長期国債買入れの平均残存期間の長期化とともに、日銀による買入可能な国債の金額を増加させることになる。
2016年度の日銀による国債の買い入れは40兆円の償還の乗り換えも含めると120兆円程度になる。来年度のカレンダーベースの国債発行額は、短期国債の25兆円を除くと122兆円となる。つまり日銀はカレンダーベースでの長期国債発行額をほぼ買い入れるが、かろうじて100%は割り込む格好となる。
それではここからさらに日銀が国債買入枠を拡大することは可能であるのか。技術的にはたしかに可能ではある。日銀が保有している国債は増えたもののまだ全体の3割程度である。さらに適格担保の拡大により、日銀が買い入れる国債の金額の余地は拡がった(現在の日銀が受け入れている担保は約81兆円で、うち約44兆円が国債)。民間金融機関が保有する国債を引きはがす格好での国債購入拡大余地はまだある。
日銀が量的・質的緩和政策のさらなる拡大をするのであれば、国債買入拡大枠は10兆円程度ではないかとの観測がある。ただし、技術的には可能ではあっても、それは日銀の異次元緩和の出口をさらに遠くにさせることになる。さらに、市場は必ずしも日銀の国債買入増額等でポジティブな反応を示すとも限らない。長期金利が0.2%を割り込んで過去最低を記録するなか、ここからの長期金利の低下に果たしてどのような意味、効果があるというのか。国債買入額の限界というよりも、国債を買い入れることによる効果に対する限界のほうが意識されることも予想されるのである。
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