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利上げの試練

 米国の中央銀行であるFRBは昨年12月のFOMCで正常化、つまり利上げを決定した。今年は年4回程度の利上げを想定しているようである。しかし、その利上げ回数に対して多すぎるのではとの意見も、ここにきてボストンやシカゴの連銀総裁などから出されている。

 FRBの利上げも日銀の2000年と2006年の利上げと同じような結果になるのではないかとの懸念も出ている。つまり、利上げを実施したものの外部環境の悪化により、再び金融緩和に追い込まれるのではないかとの見方である。

 2000年8月11日の日銀の金融政策決定会合ではゼロ金利政策の解除、つまり利上げが決定された。7月17日の金融政策決定会合でゼロ金利が解除されるのではとの見方が強まっていたが、7月12日に大手デパートのそごうが民事再生法を申請したことで、この時の解除は見送られ、一か月遅れでのゼロ金利の解除となった。

 ところが、このときの日銀のゼロ金利解除は、タイミングとしては最悪となってしまった。日銀のゼロ金利解除の要件とされたデフレ懸念の払拭であるが、デフレはこれ以降さらに強まることになってしまった。米国景気を支えたITバブルが崩壊し、米国のITバブルに影響を受けたハイテク企業中心の業績により、かろうじて支えられていた日本経済も、ITバブルの崩壊で崩れ去ったのである。デフレ懸念はさらに強まることとなり、景気は悪化していった。

 このためさらなる利上げはできず、2001年3月19日の金融政策決定会合において金融調節目標を金利から日銀当座預金残高という量に変更することを決定した。いわゆる量的緩和政策が実施されたのである。

 その量的緩和政策が解除されたのが、2006年3月9日の日銀金融政策決定会合においてであった。7月14日の政策決定会合では無担保コール翌時物金利の誘導目標をゼロに抑え込むゼロ金利政策も解除された。つまり利上げが決定された。さらに2007年2月には追加利上げを8対1の賛成多数で決定したが、この際に岩田一政副総裁が利上げに反対した。

 日銀はその後も追加利上げを模索していたものの、世界の金融経済を揺るがす事態の発生により、再び金融政策は緩和の方向に舵を向けざるを得なくなった。その事態とはサブプライム問題に端を発するリーマン・ショックに代表される世界的な金融経済危機の発生である。

 米国の昨年の利上げ後、中国経済の悪化や原油安が引き金になって世界的に株式市場は下落している。原油価格の動向をみても、チャイナバブルが弾けたというか、中国を中心とした新興国の急速な経済成長がピークダウンしたことは確かであろう。新興国の株式市場を含めて世界の株式市場を予想以上に嵩上げしていたのは日米欧による積極的な金融緩和であっただけに、米利上げによるその資金の流れの変調もここにきての株安や原油安に拍車をかけてしまった格好となっている。

 FRBもここからの利上げは困難となっていくのか。中国バブルの崩壊が2000年のITバブルの崩壊同様の影響を及ぼす懸念はないとは言えない。中東などでの地政学的リスクも存在する。しかし、リーマン・ショックやギリシャ・ショックに代表される大きな金融経済危機をやっと乗り越えてきたことも確かである。いまは大きな転換の時期にいる。このため、ある程度の株式市場や原油先物市場などでの調整はやむを得ない面がある。ここから再び世界を揺るがすような危機が訪れる懸念が果たしてどれだけあるのか。二度あることは三度あるかもしれないが、むしろその可能性に賭けることのほうが難しいように思われるのだが。

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by nihonkokusai | 2016-01-15 09:25 | 中央銀行 | Comments(0)
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