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波乱相場で米利上げの先送りはあるのか

 2000年7月17日の金融政策決定会合で、日銀がゼロ金利政策を解除できなかったのは、直前の7月12日に大手デパートのそごうが民事再生法を申請したためである。ゼロ金利政策が解除されたのは、次回の8月11日の金融政策決定会合であった。

 日銀のゼロ金利政策の解除はタイミングとしては最悪となってしまった。米国市場でIT関連株が一斉に売られ、東京市場でもハイテク関連株や値がさ株を中心に急落。いわゆるITバブルが崩壊したのである。米国のITバブルによってハイテク企業中心の業績に支えられていた日本経済はもろくも崩れ去り、年末にかけて日経平均株価は大きく下落した。2001年3月19日の金融政策決定会合において日銀は量的緩和政策を決定することになる。

 12月15、16日のFOMCでは利上げが決定されるのではないかとの見通しとなっているが、その直前になって市場はややパニックの様相を強めてきた。その原因は原油安、人民元の下落、さらに米利上げ観測による資金の流れの変化などがあると思われる。

 原油安についてはその要因はさておき、結果としてサウジアラビアなどの財政難を招くことになり、いわゆるオイルマネーに変化が生じることになる。本来であれば、原油安は日本経済にとってはプラス要因ながら、欧米の株式市場と一緒に東京株式市場も下落しているのは、このオイルマネーなどが日本株から資金を引きあげていることなども要因との見方も出ている。

 さらに人民元の下落に象徴されるように中国を中心とした新興国経済の減速も原油安の背景ともなっている。そして、原油安は中東だけでなくオーストラリアやブラジルなどの資源国の経済にも大きな影響を与えることになる。

 米利上げそのものも過剰流動性相場の過剰な部分が後退するとの見方も可能となる。リスク回避もあり資金が米債などに集まるような流れとなり、これも新興国だけでなく欧米の株式市場なども動揺させている。また、原油安やリスク回避の流れはハイイールド債(ジャンク債)市場などにも影響を与えている。

 それではこの市場での動揺がFRBの利上げに向けた姿勢に変化を与えるのであろうか。原油安はそもそも物価の上昇抑制要因となる。11日の外為市場での円高ドル安や米債高の動きは、リスクオフという動きだけでなく利上げへの不透明感の強まりが背景との見方もできる。2000年7月の日銀がそごう問題で正常化が出来なかったような事態になりえるのか。

 イエレン議長も利上げに向けて市場でのある程度の調整はやむを得ないとみていたのではなかろうか。それでもその影響を極力抑えるため、時間を掛けて正常化に向けた準備を整えてきた。今回の株式市場などの調整の動きは米利上げ観測だけが背景ではない。むしろ利上げを控えていた割には、米株式市場はかなり堅調な動きをこれまでしていたことで、この程度の調整で利上げが先送りされるようなことは考えづらい。

 さらに2000年8月の正常化からわずか9か月あまりで量的緩和政策を導入せざるを得なかった日銀のように、FRBも正常化を決定してもいずれ金融緩和政策に逆戻りするとの見方もある。たとえば今回の原油安やその要因のひとつともなっている新興国経済への影響次第では、1998年のアジアやロシアの金融危機のような事態を招く恐れもないとは限らない。しかし、世界的な規模での金融危機がそれほど頻繁に起こりえるのか。テールリスクばかり心配しては異常な金融緩和をいつまでも続けることになり、それがいずれリスクともなりうる。慎重さも必要ながら、イエレン議長は予定通り利上げを決断することが、むしろ市場の不透明要因を払拭する上でも必要ではないかと思われる。

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by nihonkokusai | 2015-12-15 08:57 | 中央銀行 | Comments(0)
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