米利上げで変わる金融政策への認識
12月3日のECB理事会では賛成多数で包括的な追加緩和策を決定した。それにも関わらずECB理事会メンバーの大半が量的緩和の拡大を望んでいなかったというのはどういう意味なのであろうか。ドラギ総裁の政治力が反対派を押し切ったのか。それとも市場ではかなり追加緩和を織り込んでしまっている以上、限定的なかたちでも追加緩和を決定せざるを得なかったのか。今回のECBの決定に対して市場は踏み込み不足との認識を示したが、これはECBの内部事情が、その結果をみて浮き彫りになったためとの見方もできるのか。
私自身は12月3日のECB理事会での追加緩和はかなり困難ではないかとみていた。しかし、実際には預金金利の引き下げや資産買入の種類を増やし、期間も延長するなど、ドラギ総裁が示唆した内容はほぼ織り込まれていた。ただし、思い切った緩和策とはなりえなかったことも事実である。
ECB理事会メンバーにとって、ドラギ流の金融緩和には効果という面でも限界があることを認識しつつある。これは日銀も同様であるはずが、木内委員を含めて執行部に対するあからさまな批判は出ていない。しかし、この状況もまもなく変わってくるのではないかと予想している。そのきっかけになりそうなのがFRBの利上げ、正常化である。
バイトマン総裁は金融政策はすでに十分緩和的で、ユーロ圏は資産バブルや金融不安定を引き起こしやすい状況にあると指摘していた。すでに大きなショックが去ったにも関わらず、異常事態に対応した過剰な金融緩和が継続している。これはひとつには市場の期待を継続させる、つまり市場の大きな変動を招きたくないとの思いがあるためともいえる。しかし、FRBは正常化に向けて、なるべく市場の動揺を抑えるように準備を進めることができた。FRBに続いてイングランド銀行もいずれそれに続くことが予想される。それに対し、ECBと日銀はこのまま異次元緩和を続けることが予想され、それを続ければ続けるほどその出口を困難にさせ、それが市場ではあらたなリスクとして認識される懸念があるのではなかろうか。
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