GDP改定値は甘利担当相の予想も上回る
甘利明経済再生担当相は12月6日のNHKの番組で、7~9月期の実質国内総生産(GDP)改定値が前期比年率で0.8%減だった速報値から上方修正されるとの認識を示した。「改定値はたぶんゼロ(%)になると思う」と述べていた。その甘利担当相の発言した数値をも上回った格好になった。
経済統計を所管する閣僚が公表前に具体的な内容を示唆するのは極めて異例である。内閣府はGDP統計について所管する閣僚にも発表当日の朝まで伝えないと説明してきたはずであった。これに関して甘利担当相は7日の経済財政諮問会議後の会見で「民間調査機関の見通しでは、改定値がゼロくらいになると発表されている」とし、NHKでの発言はあくまで民間の調査結果を踏まえた発言だと強調していた。
GDPの結果を見る限り、どうやら甘利担当相は数字を知らされていたわけではなく、たしかに民間予測の中央値であったところの前期比横ばいとの数字を示したものと思われる。知っていればプラスとの認識を示していたであろう。それでも「改定値はたぶんゼロ(%)になると思う」との発言は漏洩の可能性を想像させることで、もう少し発言は慎重にすべきであったと思われる。
GDP同様に市場動向に影響を与える日銀短観なども日銀総裁が内容を知るのは発表当日の朝とされている。これがいまは常識となっていて、担当大臣がその数値を知るはずもないとの前提での発言であったのかもしれない。しかし、担当大臣が自信を持ってゼロになると発言すると、もしや知っていたのかと疑われてもおかしくはない。
現在、このように市場に影響を与えうる経済指標の管理が徹底されているのは、過去に日銀短観の漏洩問題があったためである。日銀短観の漏洩問題は大蔵省や日銀の不祥事が相次いだタイミングでもあっただけに問題視され、それを機会に経済統計などの数字に関する情報管理が徹底された。
安倍政権にとってはアベノミクスと呼ばれた経済政策が高い支持率を維持する源となっており、三本の矢から今度は名目GDP600兆円という目標を打ち出した。その矢先に7~9月期の実質GDPが2期連続のマイナスとなってしまい、欧米ではリセッションとも捉えかねない状況下、かなり神経質になっていたことも確かであろう。首相官邸もGDP改定値の数字に対してかなり関心を抱いていたとも考えられ、それが今回の甘利担当相のテレビでの発言の背景になっていた可能性がある。
以前には日銀の金融政策決定会合の内容が事前に漏れたこともあった。いまの日銀はその点に関しては情報漏洩を防ぐことに徹底しているようだが、これが本来の情報管理のように思われる。これを機会にいまの経済指標などの情報管理がどのように徹底されているのかを明らかにすることも必要ではないかと思う。
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