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ドラギショックで緩和依存度後退も

 ECBは3日の政策理事会で追加の緩和策を決定した。主要政策金利であるところのリファイナンス金利は0.05%に据え置き、上限金利の限界貸出金利も0.30%に据え置いたが、下限金利の中銀預金金利をマイナス0.30%に引き下げた。ドラギ総裁は会見で、債券購入の期間を2017年3月まで延長する方針を示し、買い入れる資産の対象に地方債を含めることも明らかにした。買い入れた債券が償還された際に、償還金の再投資を実施することも表明した。ただし、毎月600億ユーロの資産を買い入れという規模は現状維持となった。

 このECBの追加緩和の決定を受けて市場は踏み込み不足との認識を示した。3日の欧米の株式市場は大きく下落し、3日のダウ平均は一時300ドルを超す下げとなった。ユーロ圏の国債とともに米国債や英国債も大きく下落した。米10年債利回りは2.3%台に上昇した。また外為市場ではユーロが買い戻され、ユーロ円は134円近辺に上昇した。まさにドラギショックといった展開となった。

 ECBの追加緩和を受けての欧米市場の反応は、単純にECBの追加緩和への期待外れとか、すでに追加緩和を織り込んでいたことで「噂で買って事実で売る」といった動きだけではないように思われる。もちろん、3日にはイエレンFRB議長が議会証言で追加緩和の可能性を強く示唆したように、米国の利上げが次に控えているためとの見方もできるかもしれない。しかし、それよりも過度に金融緩和に頼る時代ではなくなってきたことの表れとの見方も可能ではなかろうか。

 サブプライムローン問題からリーマンの破綻が起き、金融危機が発生した。いったん収まったころに今度はギリシャ発の欧州の信用危機が発生した。ただし、財政政策には限界があり、「市場の動揺を抑えるために」日米欧の中央銀行の大胆な金融政策が実施された。危機は去ったものの、市場は金融緩和というカンフル剤を常に欲するようになってしまった。大胆な金融緩和への期待を背景に日本ではアベノミクスが登場し、円安・株高に働きかけたが、これも背景には金融緩和への過度な依存があったといえる。政府・日銀も市場への影響を強く意識していたように思われる。

 しかし、米国では金融政策を非常時から平時の政策に戻そうとの動きをはじめ、市場の過度な動揺を抑えるために時間を掛けて、テーパリングと呼ばれる量的緩和の縮小を成功させ、今度は利上げを行うことで金融政策を正常化させようとしている。これはFRBの市場との対話をうまくこなした面もあるが、雇用情勢の好転などで、正常化に向き合える環境になったことも背景にある。

 ところがECBと日銀は正常化どころか、異次元というよりも平時にとっては異常ともいえる過度な金融緩和政策を継続させている。今回のECBの追加緩和の踏み込み不足の要因としては、ドイツやオランダ、ラトビア、リトアニアなどの反対派に配慮したとの見方もあるが、その反対派はそもそも追加緩和をする理由が見当たらないとしていた。

 今回のECBの追加緩和に対する市場の反応は、過度な金融緩和への依存、つまりマジックや魔法の世界から脱却する必要性を感じさせる。中央銀行の金融緩和は直接、物価や景気に影響を与える物ではないことは、異次元緩和から2年以上経過した日銀が証明したような格好となっている。これに市場も薄々気がついているはずである。今回のECBの政策に対する反応、さらには米国の金融政策の正常化により、市場の金融政策に対する見方に変化が生じる可能性がある。その意味では期待されても動かなかった(動けなかった)日銀はある意味正解であったのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2015-12-05 09:56 | 中央銀行 | Comments(0)
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