GDP600兆円政策と日銀の金融政策
9月24日に安倍首相が表明したアベノミクスの新三本の矢は「強い経済」、「子育て支援」、「社会保障」であり、これにより名目GDPを600兆円にすることを目標とするとした。当初の三本の矢は「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」であったが、これは新三本の矢の「強い経済」に集約されているそうであるが、少なくとも「金融政策」という表現が消えていることは確かである。
国民会議の具体的なメンバーの人選はこれからであろうが、ここに日銀総裁が含まれているのかどうかもわからない。少なくとも今回の加藤大臣の発言のなかには日銀総裁は含まれておらず、名目GDPを600兆円に向けた緊急対策に日銀の金融政策がどの程度関わるのかは不透明である。
10月7日の日銀の金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が賛成多数が決定された。経済動向の見方も前回から大きな変化はなく、会合後の会見において黒田総裁は景気や物価の基調は改善しているとの認識を示していた。
とにかく日銀の追加緩和そのものが容易でない。黒田体制になってからの日銀にとり、これまでの延長戦上で量を増やす手段には限界がある。リフレ的な政策から変化させる、つまりターゲットを量から金利にするなり、大胆ではなく小出しにして逐次投入スタイルに変化するなりの必要がある。
黒田総裁は7日の会見で、日銀の当座預金の超過準備の付利について、引き下げや撤廃については完全否定しており、量から金利、小出しの政策変更は考えづらい。
仮に追加緩和を行うとして、その効果というか結果に対しても過去のようには受け入れがたい面が出てきている。どのような手段を講ずるにせよ、結果として物価高、というよりも円安の動きが強まることが予想され、これは政府としてはむしろ受け入れがたいのではなかろうか。安倍首相は昨年10月の異次元緩和第二弾決定前に国会等で「家計や中小企業にデメリットが出てきている」と発言していた、ただし、株高ともなったことで、その点については評価していたかもしれないが、その株高効果も一時的となり、外部要因で打ち消された格好となっている。
日銀の武器庫にはすでに戦える道具はほとんどなくなっているものの、それでもなんとかかき集めて新兵器を構築するかもしれない。しかし、それを使うとしてもタイミングが重視される。景気の先行き警戒はあれど、現在がそのタイミングとは思えない。
政府と日銀の間に為替政策など含めた亀裂が入っている可能性もあるが、安倍首相がGDP600兆円などの目標達成に向けての政策をいずれ打ち出すのであれば、そこに追加緩和が組み込まれる可能性はありうる。その意味でも10月30日に動かない方が、武器に限度がある日銀にとっても得策となるのではなかろうか。
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