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TPP効果と相反する追加緩和

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉が大筋合意した。TPPとはアジア太平洋地域において高い自由化を目標とし,非関税分野や新しい貿易課題を含む包括的な協定である。シンガポール、ニュージーランド、チリ及びブルネイの4か国からスタートし、その後アメリカ合衆国、オーストラリア、ペルー、ベトナムも加えた8か国で交渉が開始された。さらにマレーシア、メキシコ、カナダ及び日本が交渉に参加し、12か国で協定にむけた交渉が行われ、かなり難航したものの、10月5日に大筋合意したと発表された。

 TPPの大筋合意を受けて参加12か国は、今後、協定案の内容が法的に矛盾していないか、詳細にチェックして最終案を取りまとめる作業を行う。TPPの協定が発効するためには、各国政府が協定に署名し、その後、各国の議会で批准される必要がある。

 TPPが発効された際の影響については、海外産品の輸入増などによる国内農業への影響も懸念されるが、消費者にとっては恩恵を被ることが多そうである。たとえば米国産の牛肉やコメ、オーストラリアのワインなどが今より安く手に入ったり、海外の渡航先で通話料金が安くなる利点も期待されている(日経新聞)。

 TPPのメリットについて安倍首相は「TPPは私たちの生活を豊かにしてくれる。世界のバラエティーあふれる商品を安く手にできるだけでなく偽物の商品を買わされて後悔することはなくなっていく」と説明。「海外に旅行したときの電話代も安くなるかもしれない。サイバーの世界を飛び交う個人情報もしっかりと守られるようになる」と強調した(産経新聞)。

 つまりTPPが発行されれば、輸入物価は下がることが予想され、それを安倍首相はメリットとして強調している。政府は物価の上昇のために日銀法改正までちらつかせて、日銀とともに物価目標を掲げた。その上に日銀は異次元緩和まで行ったにもかかわらず、肝心の物価は上がらなかった。それにもかかわらず、安倍首相はここにきてむしろ物価の下落による恩恵をアピールしている。

 政権内の物価や円安に関する認識は、ここにきてアベノミクス登場時から、かなり変化していることは確かであろう。ロイターによると「政府関係者の1人は、政府・与党を取り巻く環境は、追加緩和による円安の進行を嫌う声に包まれている」との観測もある。

 アベノミクスの登場のタイミングで急激な円安と株高が生じたが、その円安も行き過ぎると米国などからの反発とともに、輸入材料価格の高騰などによる中小企業への悪影響や、食品価格の上昇などによる個人消費への影響も意識されている。日銀の黒田総裁は 6月10日に「(実効為替レートで)ここからさらに円安はありそうにない」という発言があり、これはドル円では125円以上の円安は望んでいないことを示唆したのではとの認識が市場で拡がった。

 昨年10月の異次元緩和第二弾の本当の意図はわからないが、円安も意識したであろうことは想像できる。しかし、現在の日銀はさらなる円安要因となりかねない追加緩和には、むしろ慎重とならざるを得ないのではなかろうか。政府としても国民にTPPの恩恵をアピールしたタイミングで、日銀の追加緩和による円安はあまり歓迎しないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-10-08 09:35 | アベノミクス | Comments(0)
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