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日銀の追加緩和の矛盾点

 元日本銀行副総裁の岩田一政氏は、実体経済は日銀の想定以上に悪化しており、エネルギーを除く物価の上昇もそろそろピークアウトする可能性があるとした上で、経済・物価情勢は「日銀が何かやらざるを得ない方向に動いている」との見方を示した。具体的な追加緩和の手段としては、マイナス金利も含めた付利金利の引き下げを選択肢として挙げた(ブルームバーグ)。

 9月の日銀短観によると、大企業製造業DIはプラス12となった。前回6月調査のプラス15から悪化。悪化は3四半期ぶりとなる。先行きについてはプラス10に。また、大企業非製造業DIはプラス25となり、前回のプラス23から改善した。こちらの先行きについてはプラス19と悪化を予想している。足元はさておき、先行きについては今回改善していた大企業非製造業DIも悪化を予想している。

 4~6月期実質GDPはマイナス1.2%(二次速報)とマイナス成長となったが、8月の鉱工業生産がマイナスとなったこともあり、7~9月期についてもマイナス成長となる懸念も出てきている。

 物価に関しても8月の消費者物価指数は総合で前年比プラス0.2%、ベンチマークといえるコア指数ではマイナス0.1%と、まさに異次元緩和を決めた時点と同様のマイナスに陥った。岩田元副総裁は、エネルギーを除くコアCPIは前年比1.1%上昇しているが昨年秋の追加緩和後の円安の効果もそろそろ剥落し始める可能性もある、としている。

 しかし、ちょっと待ってほしい。2014年10月の異次元緩和第二弾の効果として円安を指摘するのはわかるが、その円安に対しては個人消費などへの負の影響も指摘されている。円安のための追加緩和というのは、ここにきての政府の円安に対する認識の変化もあり、現在の日銀は積極的には推し進めることはできないのではなかろうか。

 そして、岩田元副総裁は追加緩和手段として、国債の買い増しは限界に近づいており、株価指数連動型上場投資信託(ETF)などリスク資産の買い入れ余地も小さいとして、「消極的な選択」ながら、日銀の当座預金残高にかかる付利金利(現在0.1%)の引き下げを挙げていた。

 これも現在の日銀のスタンスからは受け入れがたいものとなる。「消極的な選択」となる付利の引き下げ程度の追加緩和を行うとすれば、これまでの戦力の逐次投入はしないとの黒田総裁の発言とは異なり、以前の岩田元副総裁がいたころのフレキシブルな政策に舵を戻すことになる。それは黒田日銀にとっては大きなスタンス変更というか、過去の金融緩和はデフレ脱却には効果がなかったとして、それを否定した上での異次元緩和であったはずであり、それも結局は効果はなかったので、元に戻します、ということになる。現状はこのようなことは日銀は受け入れがたいのではなかろうか。

 スタンスといえば、もしマイナス金利等を含めて付利の引き下げを行ったとして、調整目標を金利に戻すことになる。付利の引き下げとマネタリーベースの増加は相反するものであり、つまり金融政策の誘導目標をマネタリーベースから金利に戻す必要がある。これもまた黒田日銀の大胆な緩和政策を否定しかねないものとなる。もちろんマネタリーベースを増やしたからといって物価が上がることはないことが明らかになったが、それを否定してしまうと、異次元緩和の効果そのもを全否定することにもなり、これも受け入れがたいものとなろう。

 自民党の山本幸三衆議院議員は10月1日に、足元経済について「消費が落ちているために企業の元気が出ない」と述べ、景気・物価の下振れに対応して日銀は10月に追加緩和すべきとの認識を示した(ロイター)。現在の日銀のスタイルでの「大胆な追加緩和」は可能なのか。もしそれが出来ないとすれば、小出しの政策にり、量から金利に戻すようなことになるため、リフレ派は自らの政策が誤りであったことを認めることにもなりかねないことになる。

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by nihonkokusai | 2015-10-05 09:22 | 日銀 | Comments(0)
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