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GDP600兆円には物価目標達成が前提

 麻生財務相は25日の閣議後の会見で、安倍首相が新たに打ち出した3本の矢のうち1本目の「強い経済」に、大胆な金融政策や機動的な財政政策、成長戦略という従来の柱は集約されていると述べ、アベノミクス第2ステージでも物価目標2%達成の必要性は変わらないとの認識を示した(ロイター)。

 「強い経済」には金融政策も含まれ、2%の物価目標達成についても旗を降ろしたわけではない。当然と言えば当然の発言ながら、安倍首相の携帯料金の見直しを求める発言や、政府は円安による個人消費などへの負の影響への懸念など、リフレ政策から政府はやや距離を置こうとしているかに思える。このため金融政策という言葉が消えたことで、政府は政策の方向性を微調整しているのではとの思惑が出ても不思議ではない。

 黒田総裁は28日の会見において、安倍政権が打ち出した新3本の矢は2%の物価上昇を前提に600兆円のGDP達成を掲げているとの見解を表明した。これは大胆な金融緩和という表現は消えたものの、物価目標達成を前提にアベノミクス第2ステージが成立するとの考え方を示し、政府と日銀の連携は維持されていることを強調したかにみえる。

 ところが、この600兆円という数字は内閣府が7月に公表した試算(中長期の経済財政に関する試算)に基づいたものである点にも注意が必要となる。実質2%、名目3%以上の経済成長が続けば、2014年度に490.6兆円の名目GDPが、2020年度には594.7兆円に達するとしたものであるが(経済再生ケース)、この試算には政府・日銀の掲げる物価目標が達成されていることも前提条件としてある。つまり、消費者物価指数2%が名目GDP600兆円の前提条件になっていたので、黒田総裁の発言はこれを再確認したものに過ぎない。

 しかし、名目GDP600兆円が一人歩きしてしまうと、これも日銀の金融政策を縛ることになりかねない。実質2%、名目3%以上の経済成長が続くという、かなりハードルの高い条件に加え、現状0.2%でしかない消費者物価指数を2%に引き上げることは容易ではないというか、引き上げる手段そのものがない。もちろん円の信用を失墜させた上での物価上昇は引き起こせるかもしれないが、これこそ現実的ではない。

 現在の政府・日銀にとって、大胆な金融緩和で物価上昇を起こせるとの前提条件を否定することはできないであろう。そうなると追加緩和はさておき、このまま異次元緩和を続けざるを得なくなる事態もありうる。そうなったときには、今度は時間の経過とともに日銀の国債買入がいずれスムーズにいかなくなる懸念が強まる。すでに日銀は国債の年間発行額の9割も買い占めており、ここにきて10年債や30年債のカレントが出合わない日も出てきている。いずれ日銀の国債買入で未達が頻発するようなことになれば、実質的なテーパリングをせざるをえなくなる。現在の異次元緩和を永遠に続けることも無理がある。日銀はいずれ大きな方針転換をする必要も出てこよう。それまでに残された時間はそれほど長くはないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-09-30 09:27 | アベノミクス | Comments(0)
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