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日銀の国債買入の限界

 日銀の木内審議委員は9月3日の青森県の講演で下記のような発言をしていた。

 「国債は無制限に存在する訳でなく、また日本銀行が発行済みの国債を市中から全て購入できるわけではないことを踏まえると、国債買入れ策の持続性の問題がいずれ表面化する可能性もあります。国債買入れの限界がいつ生じるかを予見することは非常に困難ですが、仮に国債買入れに支障が生じるような事態が突然生じれば、金融政策に対する信認の低下や先行きの金融政策運営に関する不確実性が急速に高まることで、金融市場の不安定性が一気に高まることも考えられます」

 日銀の国債保有残高は約300兆円に積み上がっている。このうち短期債が約50兆円、短期債を除く国債が約250兆円。短期債を含めた国債の全体の残高は約1000兆円存在する(財務省の国債及び借入金現在高より)。つまり日銀はすでに国債全体の3割近くを保有している計算になる。

 日銀は2014年10月の異次元緩和第二弾以降は、国債の市中発行額の9割もの買い入れを行っている。このまま買入を続ければ、2026年あたりまでに日銀がほぼ国債を独占してしまう計算になるようだが、あと10年以上も異常な金融政策を続けることも考えづらい。

 そこまで待たずとも、2017年ないし18年に日銀がテーパリングをする必要があるとの指摘も多い。これは国内の債券市場関係者からだけでなく、サーカン・アースラナルプ、デニス・ボットマン両氏によるIMFのレポートでも指摘されていた。

 このような規模の国債買入を日銀が続ければ、いずれ限界が来ることは確かであるが、理論上は発行残高分まで買い入れることは可能となる。しかし、民間金融機関にとってもある一定額の国債保有は必要となる。これは日銀担保分だけではなく、安全資産として一定割合を国債で運用しているためである。

 GPIFが政府の意向も反映し、資産構成における国内債券の割合を60%から35%に引き下げた。共済組合などもこの資産構成の修正を行っている。都銀は2013年4月の異次元緩和以降、国債の残高を大きく落としていた。ゆうちょ銀行なども国債の残高が落ちている。これらは資産構成の修正というより、その分、日銀の当座預金の残高を増加させている面もある。生保などの国債保有額も頭打ちとなっていたこともあり、国内投資家とさほど競合することなく、日銀が大量に市場から国債を吸い上げても、いまのところ大きな支障はない。

 しかし、GPIFの国債の売却もある程度一巡し、都銀もむしろここにきて国債残高を増加させてきている気配がある。ゆうちょ銀行などは資産構成そのものの見直しが入る可能性があり、こちらは日銀の国債買い余力、つまりバッファーを増やすことになるかもしれない。しかし、それらをすべてカウントしても現在のペースのまま、日銀の国債買入が順調に進むことは考えづらい。

 むろん、日銀の物価目標がクリアされれば、限界を待たずにテーパリングを開始する可能性はある。しかし、異次元緩和から2年以上経過し、物価目標到達はかなり怪しくなっており、国債買入の限界が先に来る可能性のほうが高いのではなかろうか。

 木内委員は2014年10月の量的・質的緩和の拡大に反対し、ここにきて、マネタリーベースおよび長期国債保有残高が、年間約45兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節および資産買入れを行うことを主張している。これは追加緩和の効果そのものへの疑問だけでなく、日銀の国債買入にいずれ限界がくることを意識した上での主張とみられる。

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by nihonkokusai | 2015-09-09 09:42 | 国債 | Comments(0)
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