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人民元切り下げの理由と影響

 中国の中央銀行である中国人民銀行は、8月11日に人民元の取り引きの目安として定めている為替レートのドルに対する基準値を1ドル6.2298人民元と定め、10日の1ドル6.1162人民元から1.8%あまり切り下げたと発表した。さらに12日には人民元の対ドル基準値を1ドル6.3306元とし、1.6%あまり引き下げた。

 中国人民銀行はこれまで銀行が毎朝提示するレートをもとに基準値を設定していたとされるが、これまで基準値の設定方法は公表されていなかった。11日からは基準値を前日の市場の終値を重視するとして切り下げた格好となった。  人民元の為替レートは中国人民銀行が取り引きの目安として日ごとに基準値を定め、その値から上下2%以内に変動を抑えることにしている。このため、12日に人民元が一時、前日終値、つまり基準値から1.98%程度下落したタイミングで元買い介入が入ったようである。

 基準値の新たな設定方法では、従来よりも市場の実勢が反映される度合いが高まるとの見方があるが、基準値の設定では今後も当局が大きな権限を握るとの見方もある。

 中国政府はこれまで内需拡大や人民元の国際化に向け、強い人民元を目指してきたとされる。中国政府は人民元の国際化を目指し、IMFが設定している特別引き出し権(SDR)の構成通貨に人民元を採用するように要請していた。米利上げ観測などからドルが上昇していたこともあり、人民元も割高となっていた。ところが通貨高による弊害も含め、ここにきて中国経済の減速傾向とともに、物価下落によるデフレ懸念により、中国当局は方針を変更せざるを得なかったと思われる。

 今回の事実上の人民元切り下げの目的は、通貨安による輸出企業へのてこ入れと物価の上昇とみられる。7月の中国の輸出は前年同月比8.3%減と大きく落ち込んだ。中国の卸売物価指数(PPI)は5.4%の下落となり、2009年以来の低水準となっていた。昨秋から相次いで利下げするなど金融緩和を実施しているが、その効果は限られている。このためより効果の高い通貨安政策を取らざるを得なくなったものと思われる。

 中国経済の減速傾向なども要因として原油価格が再び下落基調となっている。11日のWTIは引け値ベースで2009年3月以来の安値となり、一時42ドル台まで売り込まれた。40ドル割れもあるのではとの見方も出ているが、この原油安も中国の物価下落の要因となっている。

 ECBの量的緩和の目的は通貨安であった。日銀も表立っては表明していないが、二度にわたる異次元緩和の目的も結果として通貨安にあった可能性が高い。異次元緩和以降の一時的な物価の回復も円安による影響が大きく、そこに株高が加わってアベノミクスが形成された。

 今回の中国人民銀行による事実上の人民元切り下げについて、金融市場はこれを景気てこ入れとして好材料と捉えてもおかしくはなかった。しかし、市場は反対にリスク回避の動きをみせ、欧米の株式市場は下落し、質への逃避として米国やドイツ、英国などの国債は買われた。為替市場でも質への逃避としてドルやユーロが買われたが、今回は地理的に近いことも要因となったのか円は買われず、ドルやユーロに対して一時下落していた。

 ギリシャと国際債権団が支援協議で合意したこともあり、ギリシャのリスクは後退した。今度はそれに変わって中国がリスク要因として浮上してきた。そのことを示したものが今回の事実上の人民元切り下げであると市場では認識されたものと思われる。

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by nihonkokusai | 2015-08-13 09:48 | 国際情勢 | Comments(0)
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