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日銀の物価目標に柔軟性はあるのか

 7月31日の石田浩二日銀審議委員の講演後の会見要旨が日銀のサイトにアップされているが、特に物価に関する見解が興味深いものとなっている。

 「問題は、今、霧がかかっており、よく分からないけれども、霧が晴れたら山は高いですよという話ですから、その霧のかかっている中で山がどのくらい高くなっていくのかをみていくための手段として、「総合(除くエネルギー)」いう指数を使うのであって、これが高いからもう良いということでは全くありません。」(石田審議委員の会見要旨より)

 物価の基調が重要であることは理解できるとして、何故、今頃になって日銀は除くエネルギー・持ち家の帰属家賃や除くエネルギー、そして除く生鮮食品・エネルギーなどを持ってきたのか。以前からの説明資料に添付されていたのであればわかるが、このタイミングで急にこれらを基調の判断材料として持ってきたのは、2年という年限を区切ったインフレターゲット政策が異次元緩和で達成できなかった言い訳のようにしか思われない。すでに目標達成時期も2016年に先送りされている。

 「物価目標は、もともと「物価安定の目標」を導入した時からフレキシブルなものだから導入した、ということを明言していまして、その後も、物価の基本的な考え方がリバイスされたという話は聞いていません。」(石田審議委員の会見要旨より)

 これは少しおかしくはないだろうか。石田委員が審議委員に就任したのは2011年6月である。ということは、2012年2月に日銀が物価安定の目途(コアCPIの1%)を示すことにより、実質的なインフレ目標策を導入した際と、2013年1月に物価安定の目途を修正し、目途(Goal)を目標(Target)とした上で、その目標を消費者物価指数の前年比上昇率で2%とした際の審議に加わっていたはずである。2012年2月と2013年1月の違いは1%と2%という数値の違いに加え、目処と目標という言葉の違いが存在する。2012年2月はフレキシブルなものとしても、2013年1月はそれを狭めたものにしたことは確かではなかろうか。

 さらに2013年4月の量的・質的緩和に関しては、岩田副総裁が下記のような説明をしている。

 「消費者物価の前年比上昇率2%という「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するということを、日本銀行がはっきりと約束したうえで、そのための具体的な行動として、これまでとは次元の違う金融緩和、すなわち「量的・質的金融緩和」を進めていることです。金融緩和政策が実際に効果を発揮するためには、2%という物価安定の目標を中央銀行が責任をもって達成するのだという強い意思表示、すなわち「コミットメント」と、それを裏打ちする具体的な行動を伴っていることが何より重要です。」(2013年8月の岩田日銀副総裁の講演要旨より)

 このコメントを読む限り、少なくとも量的・質的緩和に関し、その目標に対して柔軟性があるようには読み取れない。ただし、2年という期間については上述のように、結果してはかなりの柔軟性が存在しており、物価目標についても実はそれほど厳格ではなかったということなのであろうか。

 インフレターゲットを採用しているイングランド銀行も物価目標2%を掲げてはいるが、それが達成できるように金融政策を運営することが重要であり、期間等を設け必ず達成しなければいけないものではない。ただし、達成していない場合には議会でそれを説明する必要がある。

 また、FRBやECBも物価目標は掲げているが、日銀のようにマネタリーベースを極端に増やせば短期間で物価目標を達成できるような発想ではない。つまり物価目標に対してはかなり柔軟性がある。これに対して日銀は「消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」と表明した以上、これはフレキシブルな目標ということはできない。

 しかし、現実には2年で2%の物価目標は達成されなかった。当面の物価(総合やコア指数)はゼロ近傍で推移するとみられ、日銀が期待した原油価格の上昇も一時的となってしまっている。年末に向けて多少の物価上昇は期待されるが、物価目標まではかなりの距離がある。石田委員がフレキシブルな物価目標と殊更強調したのは、日銀とすればリフレ的な発想から白川時代以前の柔軟な政策へと方向を変えようとしているかに思える。そのほうが政策余地も拡がることも確かである。自分はリフレ派ではないと言った黒田総裁が7日の記者会見で物価に関してどのような発言をしてくるのかも注目したい。

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by nihonkokusai | 2015-08-04 09:58 | 日銀 | Comments(0)
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