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2年で2%の物価目標が達成されなかった理由

 2013年4月に日銀が異次元緩和を決定したタイミングで物価は上昇基調となりますが、2014年4月のプラス1.5%をピークに再び上昇幅は縮小し、2年後の2015年4月は前年比ゼロ%となってしまいました。

異次元緩和と同時に上がり始めた物価

 量的・質的緩和政策を決定した2013年4月頃からの消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)の動きを見てみると、2013年4月のコアCPIは前年比マイナス0.4%であったものが、5月にはゼロ%、6月にはプラス0.4%、8月にはプラス0.8%と順調に回復し、11月にはプラス1.2%、そして2014年4月にはプラス1.5%に上昇幅を拡大させていきました。

 一見すると異次元緩和がすぐに効果が出たかのような動きとなっていました。しかし、金融政策の効果にはタイムラグが存在するというのが一般的な見方です。2012年11月のアベノミクスにより物価上昇期待が先に強まり、これから半年程度のタイムラグを置いて物価が上がりだしたとの見方もできるかもしれません。しかし、このときの物価上昇の理由としては、期待発生とその効果というよりも、2012年11月の安倍自民党総裁の輪転機ぐるぐる発言をきっかけとした急激な円高調整、つまり円安による効果と、原油価格が高止まりしていたことが背景にあったとの見方ができます。

 2013年4月のコアCPIが前年比プラス1.5%でピークアウトし、9月にはプラス1.0%、12月にはプラス0.5%、異次元緩和から2年後の2015年4月は前年比ゼロ%となっていました。この間、日銀は2013年10月に量的・質的緩和の拡大を決定していますが、このときは都合良く金融緩和の即効性が表れたような気配はありません。2013年4月からのコアCPIの上昇幅の低下の要因として、消費増税による影響も指摘されましたが、原油価格の下落による影響の方が大きかったといえます。異次元緩和第二弾で円安が再び加速しましたが、原油安の影響が勝っていたと言えます。

帰属家賃の影響

 日本の消費者物価には持ち家に住むことも家計消費とみなし、実際に支払うことのない帰属家賃が民間家賃から推計されて加えられています。家賃はコアCPIの2割を占め、全体に与える影響が大きく、帰属家賃によって物価には下方バイアスがかかりやすくなっていま。物価2%を目指すためには、除く帰属家賃で2.4%に上げなければいけないとの見方もあります。2%の物価目標を厳格に守ろうとすると帰属家賃の下方バイアスが掛かることで、このマイナス分を他のものでカバーする必要があります。しかもそれは他のものが前年比2%を大きく超えるものとならなければ、全体としての前年比2%達成は困難となるわけです。これについて元日銀副総裁の西村氏は「原油価格にもよるが、1~1.5%は比較的早く可能だと思う。しかし、帰属家賃の存在は大きいので、それ以上にふかす必要が本当にあるのか、もう一度考え直す必要がある」とも発言していました。

 日本の消費者物価指数は帰属家賃によって下方バイアスが掛かりやすい面もありながら、原油価格や為替の動きに影響を受けやすくなっています。このため日銀は物価の基調的な変動をみるためとして、総合(除くエネルギー・持ち家の帰属家賃)のグラフと総合(除くエネルギー)のグラフ、そして総合(除く生鮮食品・エネルギー)などを参考にしようとしています。しかし、日銀が目標としているのはあくまで消費者物価指数の総合指数です。それを上げるためには金融政策はどれほどの効果があるのか。だらだらと異次元緩和を続けて行く前に、それを再検証すべき時期に来ているのではないでしょうか。

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by nihonkokusai | 2015-08-03 18:24 | 日銀 | Comments(0)
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