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ギリシャのユーロ残留の可能性が高まる

 ギリシャは9日夜に、金融支援再開の前提となる財政再建策をEU側に提出した。これを受けてまずトロイカと呼ばれる欧州委員会とIMF、ECBが内容が十分かどうか精査し、この3機関は精査の結果を11日に開かれるユーロ圏財務相会合に報告する。12日にユーロ圏19か国と加盟全28か国による首脳会議を開き、財務相会合の判断を踏まえ、支援再開の可否を最終決定する(日経新聞)。

チプラス政権の提出した財政再建策の案は、債権団が先月提示した案に近い内容となった模様である。ESMを利用した3年間の新たな救済策の前提となるギリシャ案には債権者側がかねてから求めてきた付加価値税(VAT)引き上げと年金削減が盛り込まれた。さらに債務再編と350億ユーロの成長パッケージも含むようである(ブルームバーグ)。

支援再開の可否については、最終的には12日の首脳会議で決定されるが、支援合意にこぎ着ける可能性が出てきた。もし支援合意ができれば、ギリシャのユーロ離脱の懸念は後退する。ただし、その前にひとつ大きな関門があった。同案がギリシャ議会で承認される必要があったのである。

チプラス首相は何故、債権団の財政再建策をのむ形になったにも関わらず、ギリシャで国民投票を行ったのか。しかも国民投票の結果ではEUが提案した財政緊縮策にノーという結論を出していたにも関わらずである。財政が困窮しているなか、巨額の費用が掛かる国民投票をなぜ実施したのか。その後、バルファキス財務相を辞任させて、結局は国民が反対した案を提出するという、まさに茶番劇のようなことをやったのか。

どうやら今回の茶番劇のような事態は、このギリシャ議会を睨んだものであったようである。国民投票を経て、チプラス政権の意向に国民がイエスと評価し、それによりチプラス政権の求心力が増した。与党内の反チプラス派の勢力を弱めるととともに、最大野党の党首を党首辞任に追い込むなど、議会の勢力バランスに国民投票結果が大きな影響を与えた。ユーロ残留に対するチプラス政権の意思も示されたことで、与党内の強硬派議員はさておき、主要野党の支持も得たようである。これにより与党の一部が財政緊縮策に反対票を投じても、主要野党が賛成票を投じれば、ギリシャ国会で承認を受けることができることになる。

現実に10日、ギリシャ議会はチプラス政権が新たな財政改革案に基づき債権団と交渉することを圧倒的多数で承認した。

ギリシャ議会が新たな財政改革案を承認したことで債権団との交渉への大きな関門が突破された。チプラス政権が出した財政改革案に対しては、フランスのオランド大統領は「真剣で信頼できる」と評価するなど、合意に至る可能性が出てきている。債権団との交渉をスムーズにさせるためには、強硬派でもあったバルファキス財務相の辞任させることもいたしかたなかったものであろう。このあたりも想定してのチプラス首相の行動であったとすれば、チプラス首相はかなりの策士であったように思われる。

ギリシャへの支援が再開され、ギリシャはユーロに残留できる可能性が高まった。しかし、ユーロ残留となっても、今回のギリシャのゴタゴタは今後のユーロの行く末に大きな影響を与えうる。ギリシャへの支援そのものに、ドイツ議会などがどのような反応を示すのかも懸念材料ではある。それでもギリシャのユーロ残留が確かなものとなれば、大きな不安材料が後退することも確かである。

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by nihonkokusai | 2015-07-11 12:05 | 国際情勢 | Comments(0)
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