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ECBと日銀の国債買入は財政ファイナンスか

 6月16日に日銀の黒田総裁と岩田副総裁は参院の財政金融委員会に「通貨及び金融の調節に関する報告書」に出席し、その後質疑が行われた。民主党の風間議員から岩田副総裁に対し、日銀保有の国債に関する質問があった。

 このなかでECBの国債買入と比較し、日銀には国債の買い入れに歯止めがないが、これは財政ファイナンスとみなされないのかとの質問があった。もし歯止めがあれば、国債価格の下落も限定的となり、損失が抑えられ日銀の損失準備金の取り崩しは大きなものにならないのではないかと。

 2015年1月22日に決定したECBによる国債の買い入れは、月600億ユーロ相当の資産を購入するプログラムを少なくとも1年7か月実施する。ただし、中期的なECBのインフレ目標である2%近辺に達するまで買入は行われるとしている。債券保有の上限については、国別の発行残高の33%、分類別の発行残高の25%に設定。購入する際の利回りは中銀預金金利であるマイナス0.2%までが対象となっている。

 ECBは国債などの買い入れに制限を設けているが、日銀は2013年4月の量的・質的緩和の導入に対して、それまで日銀内で定めていた制限をなくしている。民主党の風間議員はこのあたりを意識して、ECBと日銀の国債買入の節度の違いを明らかにしたかったようである。

 しかし、質問者と岩田副総裁の答弁が噛み合わず、何度も中断が入る事態となっていた。たしかに岩田副総裁の答弁がやや的を射ていなかったかもしれないが、実際のところECBも日銀も国債買入に関しては、両者ともに2%という物価目標を掲げた上で、達成できなければオープンエンドで買入を行うことも表明しており、両者ともにとにかく大胆に国債を買えばすべてうまく行くとのリフレ的な発想が根底にあり、歯止めの有無を元にその違いを説明しろと言われても難しいのではなかろうか。

 日銀が量的・質的緩和の決定の際に外した国債買入の歯止めはいくつかある。日銀保有の国債残高が日銀券の発行額を上回らないという銀行券ルールがそのひとつであった。さらに資金供給のための日銀による国債買入は発行年限別の直近発行2銘柄を除いていたが、そのルールも撤廃した。基金による国債買入(残存3年以下)はこれが適用されていなかったが、2年債だけでなく、5年債、10年債などもこの制限なしに買入が可能になった。4月4日の決定会合後の公表文では、わざわざ「長期国債の買入れは、金融政策目的で行うものであり、財政ファイナンスではない」と明記している。明記することで財政ファイナンスではないことを示したとの見方ができる一方、明記せねばならなかった事情もあったとも言える。

 ECBの場合は国を跨いだ中央銀行であるため、買い入れる国ごとの国債の量はある程度制限しなければならない事情がある。日銀が買い入れる自国の国債は当然ながら日本国債だけとなる。銘柄毎の制限は流動性の低下を避けるものとみられ、ECBの買入の制限はマーストリヒト条約により禁止されている財政ファイナンスを意識したものというよりは、技術的なものによるのではなかろうか。

 ここでECBと日銀の買入について歯止めの有無で財政ファイナンスかどうかを区別することの説明は難しい。念のため、日銀も財政法では国債の直接引き受けを禁じられている。しかし、すでに発行後、その9割近くをすぐに吸い上げている状況はきわけて財政ファイナンスに近い事も確かである。これはECBも同様であろう。しかし、そこまでしないと物価目標は達成できないとしたのが日銀の主張である。そこまでしても2年経って物価目標は達成していない。むしろその事実の方を追求すべきではなかろうか。物価目標達成に財政ファイナンスに近いリスクを冒す必要があったのかどうかを追求すべきであったと思う。

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by nihonkokusai | 2015-06-18 09:46 | 国債 | Comments(0)
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