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「特集、今年の債券市場を振り返る」


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第一部 「自民党の大勝と国債」

 今年の債券相場をトピックスごとに振り返ってみたい。まずは衆議院議員選挙の自民党の大勝による国債市場への影響から見てみたい。

 9月11日に投票が行われた衆議院選挙では、自由民主党が絶対安定多数(269議席)を大きく上回る296議席を獲得し、公明党と合わせた与党全体の議席が総定数の三分の二(32議席0)を超す圧勝となった。

 昔ながらの自民党では改革を叫んでも無理との認識から、多少でも期待できるかと民主党を支持していた基盤が、小泉首相の郵政民営化反対派への対応などを見て大きく揺るぎ始めた。改革するなら民主党しかないという選択から、自民党も改革ができるのではないかとの期待に変ってきた。改革への阻害要因となっていた者たちが郵政民営化という篩いにかけられ落とされていった。しかも刺客を立てるなど改革を阻むものは許さじとの小泉首相の姿勢に共感する人たちが増加し、今回の自民党の大勝に繋がったものと思われる。 この自民党の大勝がどのような影響を国債市場に与えるのであろうか。郵政民営化は財政構造改革に向けての象徴的なものである。年金改革等ほかにすべきことも山積みながらも、これもできずに改革ができるのかとの意見はある意味正しい。財政構造改革は巨額の政府債務の存在がある以上、避けて通れない道でもある。国債への信認を維持させるためにも、構造改革は必要不可欠なのである。

 小泉政権が発足してからの国債の発行額(当初予定)は下記の通り、
  年度   新規財源債 借換債 財投債  合計(兆円)
 2002年度    30.0  69.6  34.3  134.0
 2003年度    36.4  75.0  30.0  141.4
 2004年度    36.6  84.5  41.3  162.3
 2005年度    34.4  103.8  31.3 169.5
 2006年度    30.0  108.3 27.2 165.4

 新規財源債はこれまで当初の小泉首相の公約通り30兆円以内に抑えられたのは2002年度のみであった。しかし、この選挙での大勝を受けて、小泉首相はさらに財政構造改革を勧めるために来年度の歳出を削減し、また景気回復により税収の伸びも期待できることで、2006年度予算では新規財源債の発行を30兆円以下に抑制した。

 しかし、それでも2005年度末の国債の残高は538兆円にも及ぶ。この債務残高を減らす方向に向かわせなければ、いずれ危機的状況が訪れる可能性がある以上、今回の国民の選択はある意味、的を射たものであろう。国債市場にとってはこの選挙結果は、売り買いの要因と見なすよりも、国債への信認が維持されるという面を重視すべきであると思う。

 さらに、政府の経済諮問会議が年明けにも決める経済財政の中期見通しにおいて、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を黒字にする目標時期を2011年度と1年前倒しするそうである。

 国のプライマリー・バランスを国債費-公債金収入として計算すると、 2006年度を当てはめると、-112,114=187,616-299,730と、 2005年度の、-159,478=184,422-343,900 より4.7兆円程度改善される。

 歳出削減や税収の伸びなどを受けて新規財源債の発行が30兆円以下に抑制されたことにより、大幅な改善となり、さらに今後も構造改革の進展などを受けて成長率が高まるとの予測の上で、プライマリー・バランスの黒字化目標時期を前倒しするようである。ちなみに、2006年度はもう少し改善幅が大きくなるとの予測もある。

 2012年度ですら難しいと思われたプライマリー・バランスの黒字化は、景気回復やデフレ脱却への道筋も見えつある中、現実味を帯びてきた。もちろんこの達成にはさらなる歳出削減や税収の伸びがなければ難しい。この計算には消費税の増税は加味されていないが、現実には2008年度以降の引き上げもある程度、視野に入れているのではないかとも思われる。なににせよ、プライマリー・バランスを均衡化させる見込みが多少なりできたことによって、国債への信任はさらに強まりを増すものとみられる。


第二部 「量的緩和解除に向けての日銀の動きと牽制する政府」

 10月の全国消費者物価指数(生鮮食料品を除く)は前年比ゼロとなり、さらに11月は前年比+0.1%と2003年10月以来のプラス転換となった。

 日銀の福井総裁は10月以降のプラス転換を予想しており、その後のプラス幅の拡大などを確認したのち、2006年度に向けての量的緩和解除の可能性を示唆していた。ところが、これに対して政府サイドからは時期尚早との声が上がっており、12月8日に昼食を挟んでの小泉首相と福井日銀総裁との懇談会が注目された。

 今回は前回開催から1年近く間が空いてしまったこともあり、政府側からの働きかけにより開催されたと伝えられた。しかし、実際のところは政府と日銀のぎくしゃくした関係修復が狙いであったものとも思われる。政府側からは小泉首相、谷垣財務相、与謝野経済財政・金融担当相、安倍官房長官らが出席し、日銀側からは福井総裁、武藤、岩田量副総裁が出席した。

 伝えられるところによると「現状の金融政策について福井日銀総裁が中心に話をした」(武藤副総裁)そうであり、「小泉首相と量的緩和解除の時期は話していない」(福井総裁)としながらも、「小泉首相からは量的緩和政策に関する言及はなかった」(福井総裁)、「量的緩和解除をめぐる小泉首相の要請はない」(岩田日銀副総裁)、とのコメントも見られた。今回の懇談は日銀にとり政府側の意向、特に小泉首相の量的緩和解除に向けての意向を探るための懇談であったとも考えられる。

 竹中総務相や中川政調会長などが日銀法改正についてまで言及していたが、今回は小泉首相が表立っての反対の意思を示さなかった。さらに首相は量的緩和解除について「物価が安定してゼロ%以上になれば」と述べたとも伝えられ、これは解除について一定理解を示したとも捉えられる。さらに、日銀の量的緩和解除反対の急先鋒とも見なされていた竹中総務相も9日には「量的緩和をやるかやらないか、公定歩合をどうするかと発言すれば圧力になる」ともコメントしており、量的緩和解除については容認するとも思われるコメントを出していた。

 仮に日銀が量的緩和解除を金融政策決定会合において決定しようとする際に、出席している財務省と内閣府のそれぞれ政府側出席者が、議決延期請求権を行使するかどうか検討するような状況になった際には、それぞれの担当大臣の了承を求める必要がある。今回の最終決定は首相官邸、特に小泉首相の了承が必要になると考えられる。そうなれば一部大臣の行使を求める声があったとしても、小泉首相が了承しない限りは、議決延期請求権の行使はできないものとみられる。

 9日、日銀の福井総裁は「金融政策は堂々と正道を歩んでいく。それをもって政府の望ましい経済政策に貢献していくという組み合わせ以外にないということは、政府でも異論は全くないと思う」とコメントしており、これも小泉首相の意を含んだ発言ではなかったかと考えられるのである。

 これ以降、表立っての政府側からの日銀への批判は影を潜めた。政府サイドは、量的緩和解除は容認するものの、その後のゼロ金利の継続を求める姿勢に変化したのではないかと思われるのである。


第三部 「2005年の長期金利の動き」

 2005年の長期金利は1.165%から1.630%の間の動きとなり、2004年の1.190%から1.940%に比べて、さらに低位安定が続く結果となった。

 年初から3月あたりにかけては、経済指標も市場予想を上回るものも多くなり景気の先行きに対する慎重な見方も後退し日経平均が年初来高値をさらに更新して上昇した。このため、長期金利は3月初めにかけて1.5%台に上昇した。

 しかし、その後、今度は再び予想を下回る経済指標が増えたことや、欧米、そして中国などの海外経済の景気拡大ペースに対する懸念が強まり、6月末にかけて長期金利は再び低下傾向となり、1.2%をも割り込んで、一時1.165%まで利回りが低下した。

 7月1日に発表された日銀短観では予想以上に日本経済について好調とみている経営者が多いという結果となり、これ以降、今度はやや強めの経済指標の発表が続いた。

 米国においても再び好調な経済指標も出てきており、欧州でも利下げではなく利上げ観測まで出てきた。中国は7月に元の切り上げを実施したが、予想より小幅に止まっていたことなどから、これによる影響は限定的となった。さらに原油価格の上昇についても、日本の景気回復の腰を折るほどの影響とはならず、加えて、懸念されたIT関連主体の在庫調整も徐々に進むこととなった。

 このため長期金利は再び上昇基調となり、7月と8月に1.485%をつけ1.5%に接近した。10月以降の全国コアCPIのプラス転換もほぼ確実視され、日銀も早ければ来年前半の量的緩和解除も視野に入れているとも見られ、この時期には長期金利だけではなく短期金利も上昇圧力を強めた。

 輸出に持ち直しの動きがあり、設備投資も緩やかな上昇基調が続いている上に、予想以上に個人消費が増加基調になった。このため、日経平均株価も12000円の大台に乗せてきた。

 8月9日には政府や日銀が景気の踊り場脱却を表明したが、その前日の8月8日に郵政民営化関連法案が参院本会議で採決され、これが否決されたことを受けて、衆院は解散総選挙となった。政治の空白や先行きの不透明感の強まりによって、長期金利はその後いったん1.3%近くまで買われた。

 ところが9月11日に投票が行われた衆議院選挙では、自由民主党が絶対安定多数を大きく上回る296議席を獲得し、公明党と合わせた与党全体の議席が総定数の三分の二(32議席0)を超す圧勝となった。これを受けて、日本の財政構造改革がさらに進展するとの見方により、海外投資家の買いがさらに活発化し、日経平均株価は13000円を抜け、10月末にかけ14000円も突破、11月30日にはついに15000円台をつけるなど、ほぼ一本調子の上昇基調となった。ハリケーン被害なども懸念された米国経済も予想以上にしっかりしており、またECBも12月1日には利上げを実施した。中国経済も好調を持続していることで、日本経済は個人消費なども回復基調となってきた。また、消費者物価指数も10月は前年比ゼロ、11月は前年比+0.1%と予想されたようにプラスに浮上した。

 ところが長期金利は株価との連動性が薄れ、11月7日に1.630%まで上昇したのちは、消費者物価のプラス転換なども織り込み、欧米の長期金利の低下基調などもあったことで、徐々に低下基調を強め、12月27日には1.5%を割り込んだ。

 2006年度予算において、新規財源債が30兆円を割り込み、さらに政融資資金特別会計の金利変動準備金のうち、その約半分にあたる12兆円を来年度の国債の買入消却にあてる方針などが発表されるなど、国債需給については好材料も多く出たことも、フォローの材料になったものと思われる。
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by nihonkokusai | 2005-12-29 10:03 | 債券市場 | Comments(0)
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