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日銀の次の一手がますます不明瞭に

 6月10日の衆院財務金融委員会で日銀の黒田総裁は、「米連邦準備制度理事会(FRB)が金利引き上げプロセスに入るから、今後、さらに円安・ドル高が進むと決めつけるのは難しい」と発言していた。FRBと日銀の金融政策の方向性の違いを意識した自国通貨安により、輸出企業に好影響を与えるとともに、輸入物価の上昇による物価の浮揚効果を狙う政策はこの発言で可能性が薄れたともとれる。

 日銀の佐藤審議委員は円安に対して、「円安は輸出の増加やグローバルに展開している企業の収益改善のほか、株価の上昇といったプラス効果を持つと思います。その一方で、輸入コストの上昇や、その価格転嫁を通じて、中小企業や非製造業の収益や家計の実質所得に対する押し下げ圧力として作用するといった面もある」と会見で発言していた。たしかにここにきて政府からも円安のマイナス効果を指摘する声も出ている。また、米議会で環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の合意に欠かせない米大統領貿易促進権限(TPA)法案の審議が重要な局面を迎えていることに対して、政府側に配慮しているとの見方もある。

 さらに穿った見方となるが、昨年10月の量的・質的緩和の拡大にあたり、FRBのテーパリング終了のタイミングでぶつけてきたことでの円安ドル高の動きに対して、米国当局あたりから懸念の声が出ていたとしてもおかしくはない。さらにECBも量的緩和を実施することで自国通貨安を狙うなどしており、これ以上のドル高を米国も望んではいないのではなかろうか。

 通貨安狙いでの追加緩和が難しくなり、日銀はますます動きが取りづらくなる。佐藤審議委員は10日の講演で、国債買い入れの限界についてコメントしていたが、このまま日銀が現在の規模の買入を続けるだけでも、いずれオペの未達が発生する懸念がある。欧米の長期金利が上昇してきている状況のなかで、国債のボラティリティも大きくなりつつあり、このような環境では未達のリスクはさらに膨らむことも予想される。少なくともこれ以上の国債買入は無理である。

 もちろん質的緩和と称してETFやREIT、社債などの買入増額の可能性は否定できないが、量を増やさなければ意味がない上、市場規模からもかなり無理を生じさせる懸念もある。こちらも現実性は薄い。

 それでは政策目標をマネタリーベースから金利に戻し、超過準備の付利の引き下げや撤廃、さらにはマイナス金利等による追加緩和の可能性については、黒田総裁も佐藤審議委員もきっぱりと否定している。もちろんここで否定して次回の金融政策決定会合で決定したとしても何らおかしくはない。異次元緩和第二弾も事前に否定的な発言をしていたぐらいである。それでもいまのところマネタリーベースから金利に戻すような大きな修正はどうやら取るつもりはないようである。

 今後、前年比マイナスも想定される消費者物価の前年比がこのまま低迷を続けても、日銀は現在のスタンスを半永久的に変えないつもりなのか。何かの弾みで消費者物価指数が2.0%に近づくのを待つだけであろうか。

 物価が上がらずとも雇用が改善し、株価も上昇していればそれで良し。これも日銀の異次元緩和の効果とするとしても、果たしてそれで良いものなのか。もし異次元緩和に物価浮揚効果がないと認めるのならば、リフレ政策から自由度の拡がるFRBのような、つまりは白川総裁時代の金融政策のスタンスに戻すことが必要ではないかと思う。

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by nihonkokusai | 2015-06-15 09:27 | 日銀 | Comments(0)
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