牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

日銀は反リフレ派が巻き返しか

 日銀が2013年4月に量的・質的緩和を導入して約束の2年がすでに経過した。日銀はこの緩和を異次元の緩和と称し、2年で2%の物価目標を達成するとした。しかし、それから2年目となる今年4月の消費者物価指数はコア指数が消費増税の影響を除いてゼロ%となり、物価目標の2%は達成どころか、異次元緩和以前の水準に戻ってしまっている。

 その結果、日銀は2年という期間を曖昧にして延長させた格好ではあるが、2年という期間で達成できなかったことは確かである。これはいわゆるリフレ政策が誤りであったことを示すものといえるのではなかろうか。1990年代初めに当時の岩田規久男上智大学教授と翁邦雄日本銀行調査統計局企画調査課長との間でのマネーサプライ論争があった。これはリフレ派と日銀の金融政策の主流派との論争であった。この際に日銀は結局、リフレ政策を退けた格好だが、2012年12月の安倍政権の誕生により、異端ともされたリフレ政策を導入せざるを得なかった。これについては日銀内部でも批判的な意見が多かったはずだが、安倍政権の勢いがそれを遠ざけた格好となったのではなかろうか。この際に、それでは約束の2年間だけは様子を見てやろうとリフレ政策の行く末を見守っていた関係者も多かったのではないかと推測される。

 その2年が経過した。結果は見ての通りとなる。結果が出た以上、リフレ政策はやはり誤りであり、その政策をさらに推し進めると出口政策が困難になるなどの弊害が起きかねない。現実にこれ以上量を増やすことも難しい。日銀執行部にとっても身動きできない状況下、リフレ政策そのものを見直そうとしているのではなかろうか。

 そのひとつの現れが、マネタリーベースとの言葉の封印ではなかろうか。『「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証』という企画局のレポート(日銀レビュー)で「マネタリーベース」との言葉を封印し、さらには先日の岩田副総裁の講演でも「マネタリーベース」との言葉を使わなかったことからも見受けられる。岩田副総裁への記者会見では「マネタリーベース」についての質問が出たが、岩田副総裁は量ではなく質であることを殊更強調していた。リフレ派筆頭であったはずの岩田副総裁としては、おかしな発言と言えよう。

 そして、岩田副総裁は講演の参考グラフからついに予想物価のグラフを使わなくなった。6月4日の国際会議の開会挨拶で、黒田日銀総裁は予想物価上昇率について、「中央銀行にとっては、予想物価上昇率をどのように計測するのか、予想物価上昇率が実際の企業の価格・賃金設定行動や家計の消費行動にどのように影響するのか、さらに、予想物価上昇率のアンカーの頑健さをどのように評価するのか、といった点は政策運営上の大きな関心事項です。この分野の研究が、今後さらに進展していくことを期待します。」とコメントしている。予想物価があってこその異次元緩和の波及経路であったはずが、まだ研究途中とはどういうことなのか。

 さらにピーターパンの物語の「飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう」という言葉を紹介している。大切なことは、前向きな姿勢と確信とはしているが、すでにリフレという魔法が解けてしまったことを暗に示しているのではないかと勘ぐりたくなる。

 この黒田総裁の講演では、非伝統的な金融政策との言葉が何度か出てくる。また日銀のレポート、「均衡イールドカーブの概念と計測」のなかで「イールドカーブ全体に働きかける非伝統的な金融政策」とあった。ややこちらも勘ぐり過ぎかもしれないが、量を中心とした異次元緩和、いわゆるリフレ政策から、本来の金融政策に舵を戻そうとしているのではなかろうか。2年経って結果が出なかったリフレ政策に対し日銀のなかでも、反リフレ派の勢力の巻き戻しが起きているのではなかろうか。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2015-06-09 09:36 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー