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米利上げ時期は前議長を見習って12月?

 6月5日に発表された5月の米雇用統計で、非農業雇用者数は前月比28万人増となり、市場予想の22万人台を大きく上回った。失業率は労働人口の増加を受けて5.5%と4月の5.4%に小幅上昇し、平均時給は前月比0.3%上昇となり、時給の前年同月比上昇率は2.3%と2013年8月以来の高い水準となった。

 単月の数値だけで金融政策が決められるわけではない。しかし、ここにきての経済指標がやや悪化しているものが多く、市場ではFRBの利上げ予想時期が後退し、この雇用統計の数字によりそれが再び引き寄せた格好となった。

 FRBのブレイナード理事は、このところ続く弱いデータが経済の力強さに疑問を生じさせていると指摘し、年内利上げの予定を遅らせることにオープンな姿勢を示唆したとされる。さらにIMFは4日の報告書で、FOMCは初回利上げを2016年前半まで先送りするべきだと指摘していた。

 しかし、ニューヨーク連銀のダドリー総裁からは「労働市場の改善が続き、インフレ期待が今後もしっかり抑えられた場合は、成長見通しをめぐり暗雲が垂れ込めない限り、金融政策正常化の年内開始決定を支持するだろう」との発言があり、あらためて年内利上げの可能性を指摘した。イエレン議長のできれば年内に利上げを行いたいとの意向には変化はないと思われる。

 5日の米国債券市場では、米10年債利回りは2.43%まで上昇した。4日にも一時2.42%まで上昇しており、節目のひとつ2.5%に接近しつつある。ここを抜けるといよいよ3.0%が見えてくる。3%は2013年12月にFRBがテーパリングを開始した際の水準であり、その前は2013年9月に3%台をつけていた。

 2013年9月に3%台をつけていたのは9月のFOMCでのテーパリング開始の決定が予想されていたためである。実際には9月のテーパリング開始は見送られ、12月となったが、いったん予行練習をした効果があったのか、米10年債利回りの12月の上昇は3%近辺で止まった。

 2013年9月に米10年債利回りが3%台に乗せるきっかけとなったのが、5月22日のバーナンキ議長(当時)の発言である。バーナンキ議長は上下両院合同経済委員会の証言を行ったあとの会見で、「状況改善の継続を確認し、持続可能と確信できれば、今後数回の会合で資産買い入れを縮小することは可能だ」と発言した。このテーパリングの発言を受けて市場が揺れた。これをかんしゃく(tantrum)を起こしたと表見され、テーパー・タントラム(taper tantrum)との言葉が生まれた。

 面白いことに、FRBの年内利上げがあらためて意識されたのは今年5月22日のイエレン議長の講演で、FRBの利上げについて、年内のある時点でと発言したこともきっかけとされる。この発言はこれまでも何度か繰り返されていたものではあるものの、まさかとは思うが2年前の同じ日にバーナンキ前議長がテーパリングを示唆していたことも意識していたのであろうか。

 今回もその前任者が引き起こしたとされる市場のかんしゃくが起き始めているとの観測もある。ただし、今回の米長期金利の上昇の背景には、FRBの利上げ観測とともにドイツの長期金利の反発も要因となっていることにも注意したい。いずれにしても米長期金利が上がりやすい環境にあることは確かであろう。

 2013年9月頃の様子をあらためて確認したところ、この年のワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムには、バーナンキ議長は出席していなかった。イエレン議長も今年8月27日~29日にジャクソンホールで開催される年次経済シンポジウムへの参加を見送る方針だと伝えられている。どうやらこれもまた先代議長を見習っているのかもしれない。

 そうだとすると意外に2013年と同様に、9月のFOMCで利上げは見送って12月ということも考えられるかもしれない。イエレン議長の「年後半」とはいったいどのタイミングを示すのか。それを巡っての市場のかんしゃくはどの程度まで起きるのか。いずれにしても米長期金利の3.0%が大きな目安になることは確かである。

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by nihonkokusai | 2015-06-09 09:25 | 中央銀行 | Comments(0)
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