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ドラギ総裁発言に潜むリスク

 6月3日のECB政策理事会では3つの政策金利をすべて据え置いた。ドラギ総裁は会見で、「景気回復はすそ野を広げ、内需は金融政策措置によってさらに支えられるはずだ。回復はわれわれの予想通りに進展している」と述べた(ブルームバーグ)。

 今年のインフレ率予想については0.3%と従来予想のゼロから引き上げられたが、2017年に1.8%に達するとの予想は変わらずとなっていた。

 そしてドラギ総裁は、市場はボラティリティの高い時期に順応する必要があると述べたそうである。この「市場」とはユーロ圏の債券市場のことを指しているとみられる。たしかにここにきて値動きが荒くはなっていたが、このドラギ総裁の発言がさらにボラティリティを高める結果となった。

 ドラギ総裁が念願の量的緩和政策をドイツなどの反対を押して決定したのが今年の1月22日であった。それから半年も経過せずに、すでにその効果は順調に現れているかのような説明である。

 しかし、この姿はどこかで見たことはなかろうか。日銀が異次元緩和を決定した2013年4月から消費者物価指数はぐんぐんと上がり、1年後には前年比プラス1.5%に上昇した。いかにも異次元緩和が効いたような格好ながら、そこにはアベトレードによる円安の効果や原油価格の高止まり、消費増税前の駆け込み需要等々の影響が大きかったといえる。

 だからこそ、異次元緩和は継続されていても物価の前年比はそこからゼロ近辺にまで低下した。原油安や消費増税による個人消費の低迷等が影響したこともあろうが、それはつまり物価の前年比が拡大するときも縮小するときも異次元緩和による期待とかレジームチェンジといった目に見えない力が働いていたわけではないことを示している。

 今回のユーロ圏の景気や物価の動向についても、ドラギトレードと称されるかはさておき、量的緩和によるユーロ安や株高の恩恵も大きかったとみられる。そもそもECBは量的緩和と称しているものの、そのターゲットは金利に置かれており、長期金利の低下を促す事による効果を期待していたはずである。その長期金利が上昇しても、さらなる上昇への可能性に備えよといったような発言は、量的緩和の波及効果の説明に矛盾するものではなかろうか。

 いずれにしても金融政策は景気や物価に対してはあくまで補助的な手段に過ぎない。そこに過度な期待を求めるべきものではない。しかし、市場は大きな危機を経験したことで、この金融政策に過度に期待し反応してしまうことも確かである。通貨安や株高はその意味で金融政策の効果が現れているかのような結果ではあるものの、市場心理は揺れやすい。中央銀行はアナウンスメント効果も意識しているようだが、使い方を誤ると市場が反乱を起こす懸念も出てくる。金融政策はあくまで補助的手段との認識を持たないと、いずれ経済環境との整合性に矛盾も生じることになりかねない。このあたりは日銀も含めて注意すべきものとなろう。

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by nihonkokusai | 2015-06-05 09:29 | 中央銀行 | Comments(0)
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