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日銀審議委員から追加緩和の議案が出ない理由

 4月30日の日銀金融政策決定会合では、8対1で現在の金融政策を継続することを決定した。今回も反対したのは木内登英委員で、木内委員はマネタリーベースおよび長期国債保有残高が、年間約45兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節および資産買入れを行うなどの議案が提出されたが、これは反対多数で否決された。

 今回の日銀の金融政策決定会合では一部に追加緩和の思惑も出ていた。自民党の山本幸三衆院議員が、30日に控える日銀の金融政策決定会合に関して、「何もしないという話はちょっとあり得ない」と述べたと伝えられ、これが追加緩和観測のひとつの要因となっていた。

 昨年10月31日に日銀が決定した量的・質的緩和政策は市場にとってサプライズとなったが、それを事前に山本議員は求める発言をしていた。さらにこの際には、ある大手証券が追加緩和を予想をしており、そこが今回も追加緩和がありうるとの見方となっていた。

 昨年10月のサプライズを予見した人たちによる今回の追加緩和観測コメントは無視はできないが、山本議員の発言は日銀の動向を察知してのものではなかった可能性が高い。異次元緩和第二弾は密かに1か月前あたりから黒田総裁を中心に少人数で準備を進めていたとの観測もあり、その動きを知っていた可能性もゼロではないが、最近の日銀の守秘義務は徹底しているようにも思われ、事前に山本議員が知っていた可能性は低い。たまたまリフレ派の一部の追加緩和期待と黒田総裁の思惑の方向性が一致していた可能性が高いのではなかろうか。

 ただし、ここ何年かの展望レポートを発表し、その月だけ2回の会合が開かれる4月と10月の2回目の会合では、なぜか金融政策の変更が多かったことも、今回の追加緩和期待に繋がった可能性があった。2011年から2014年にかけて4月と10月の決定会合では、8回中4回、つまり50%の確率で追加緩和を決定していた。今回もという期待が出たとしてもおかしくはなかった。

2014年10月31日13時44分(異次元緩和パート2)、4月30日12時51分(現状維持)
2013年10月31日13時14分(現状維持)、4月26日13時35分(現状維持)
2012年10月30日14時46分(追加緩和)、4月27日12時46分(追加緩和)
2011年10月27日13時31分(追加緩和)、4月28日13時31分(現状維持)

 ところで追加緩和はなくても、追加緩和に近い効果を演出する可能性があるひとつの手段が存在していた。それはたとえば審議委員から木内委員のように独自案で追加緩和の議案提示をすることである。

 3月25日からはリフレ派を代表する原田委員が参加したことで、この原田委員が追加緩和の議案を提示すると、これは日銀の追加緩和のひとつの徴候として市場は捉えた可能性があった。ある意味、全員一致からこのような反対者を出すことで流れを作るということもひとつの政策手段となりうる。しかし、現在の黒田日銀ではこの手段を取ることは考えづらいのである。

 ちなみに木内委員の反対については、執行部(総裁・副総裁)の意向等を意識したものではなく、あくまでも異次元緩和の効果に対しての疑問による独自案と言う位置づけであり、前触れ的なものではない。

 それではなぜ市場に追加緩和を意識させるような審議委員の独自案が、現在の黒田体制では出しづらいのか。それは黒田総裁の金融緩和はサプライズを意識し、少人数で進めてきたと言われているためである。現在の日銀では、市場への根回しといった手法は少なくとも追加緩和では採りづらいと思われる。リフレ的な考え方に賛同する委員は、黒田総裁の意向を尊重しているとみられ、その政策に対して勝手に走るようなことは控えるのではなかろうか。黒田日銀となって、異次元緩和に異を唱えない限りは、総裁の意向が強く反映されている状況になっているのではなかろうか。
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by nihonkokusai | 2015-05-05 11:23 | 日銀 | Comments(0)
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