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日銀が国債を買えば物価が上がる仕組みに迫る

 昨日は日銀の国債買入に関わる日銀券の発行の仕組みについて解説したが、今回は日銀が国債を大量に買い入れるとなぜ物価が上がるのか、その謎に迫ってみたい。

 日銀の国債買入と日銀券の発行の仕組みについておさらいしたい。日銀が市中、すなわち銀行などから1兆円の国債を買う時に、日銀券を刷る輪転機は動かない。日銀のバランスシート上では日銀の資産として1兆円の国債が増加するが、反対側の負債も1兆円増加する。この場合は日銀にある民間銀行の当座預金に1兆円計上され、このままでは日銀券は発行されていない。民間銀行が日銀の当座預金から必要に応じて、自分の預金を引き出してはじめて日銀券は発行される。その日銀券も日銀のバランスシート上では負債として計上される。

 日銀が市場から大量に国債を買うということは、日銀のバランスシートの資産として国債が増加し、反対側の負債として主に民間銀行の当座預金がその分増加する。これによってどうやら物価が上がる・・・らしい。長期金利を含む金利の引き下げ効果は、すでにここまで金利が下がっているなかで限定的と思われるが、果たしてそれ以外にどのような効果が存在しているのか。

 日銀にある民間銀行の当座預金が増えると、どうして物価が上がるのか。ちなみに2001年から2006年のときの日銀の量的緩和時には、資産側には短い期間の国債など短期で運用される金融商品が大量に計上されていた。今回はここの期間が長めで量が多いだけの違いである。短いものを長くすると、より物価への期待が強まると言っている人もいるが、日銀のバランスシート上ではあまり意味をなさない。

 民間銀行側からみてみると、大事に抱えていた国債を日銀に売却してしまったことで、日銀の当座預金の残高が増える。昔ならば利子のつかない日銀の当座預金に置くよりも、少しでも運用益が出るようにほかの資産、たとえば外国債券や株式などに資金を振り向けるか、本業であるところの貸し出しに回す。ただし、貸し出しは借りてくれる人がいなければ増加できないという事情もある。民間銀行側の主な行動パターンとしては、他のリスク資産への移行が想定され、これがポートフォリオのリバランス効果となる・・・はずであった。ところがいまならば、日銀の当座預金の法定準備金を超える部分(超過準備)には0.1%という利子が、もれなく付いていくるのである。

 0.1%といっても、いまではたいへん貴重な利子である。日銀がせっせと国債を買ってくれるので国債の利回りは低下し、一時は5年国債の利回りもマイナスになっていた。5年国債など買うよりも日銀の当座預金に置くだけで、なんと0.1%の利子が付いてくるのである。ただし、日銀の当座預金に置くだけは運用にはならない、としている銀行もあるそうだが、それはさておき0.1%もつくならここに置いとくに限る。ノーリンク、そこそこリターン。

 0.1%という超過準備に付く利子は日銀の当座預金口座を持つ銀行への補助金ではないかとの議論もあるが、日銀としては当座預金に残してほしいという事情も存在する。なぜならば、日銀の現在の政策目標がこの当座預金残高を含めたマネタリーベースとなっているためである。

 それはさておき、本題に戻り、どうして日銀が国債を大量に買うと物価が上がるのか。ひとつはポートフォリオのリバランス効果があり、株高や円安要因となること。また、外為取引において、どういうわけか、どこの中央銀行が積極的に金融緩和をしているのかで、円やドル、ユーロなどの相対的な弱さを意識している面がある。つまり大胆な緩和という結果となる大量の国債買いを日銀が決めると、条件反射のように円を売ってくれる人が増えるとの期待もある。

 日銀のバランスシートが大きくなると予想物価が上昇すると言う人もいるようだが、予想物価の計り方も良くわからないところに、現実の物価と日銀のバランスシートの増減に相関関係は見当たらない。

 ただし、日銀が期間の長い国債を買うことで、財政ファイナンスをしているとアピールすると、物価と長期金利は一気に跳ね上がる期待、いやこの場合は懸念がある。まさかそれを期待しているわけではないと思うが、日銀が思い切った国債を買えば物価が上がるとのカラクリは日銀のバランスシート上からは、その理由はあまり見えてはこないのである。

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by nihonkokusai | 2015-03-04 09:42
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