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債券市場のプチバブル崩壊の原因

 ここでも何度か2003年のVARショックのことを書いてきたが、今年の1月20日を起点とする日本の債券相場の変調はプチバブル崩壊といった動きとなっている。そしてそれは2003年のVARショックのときと類似点が多いことも確かであった。

 あらためて2003年のVARショックとは何であったのかを確認してみたい。2003年5月のりそな銀行に対する資本注入によって、大手銀行は潰さないといった意識が強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われ、海外投資家の買いなどにより、日経平均株価は2003年4月の7607.88円がバブル崩壊後の安値となり底打ちした。米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、日銀の積極的な追加緩和も加わり、その後上昇基調を強めた。

 2003年3月20日、速水優総裁の任期満了に伴い福井俊彦氏が日銀総裁に就任した。就任直後の25日に臨時の金融政策決定会合が開催され、金融政策は全員一致で現状維持としたが、なお書きで、当面、国際政治情勢など不確実性の高い状況が続くとみられることを踏まえ、金融市場の安定確保に万全を期すため、必要に応じ、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行うとした。決定会合のあと通常の政策委員会を開催し、銀行保有株買取枠を2兆円から3兆円に拡大した。

 4月30日の決定会合では当座預金残高の目標値を、17~22兆円程度から22~27兆円程度に引き上げ、5月20日の決定会合では27~30兆円程度に引き上げた。このように福井総裁に代わってから、日銀の当座預金残高目標の引き上げは数度にわたって行われ、福井総裁のこの積極的な緩和姿勢を市場は好感した。

 6月までは債券相場は1日あたりの値幅も限られながら、じりじりと高値を更新し続けた。6月11日に30年債が0.960%、20年債0.745%、そして10年債0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録したのである。 この相場上昇過程において、目立ったのが都市銀行の一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いとされる。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VAR)の仕組み上、変動値幅が少ないことでそのリスク許容度がかなり広がりをみせていた。株価の低迷にともなって債券での収益拡大の狙いもあり、必要以上にポジションを積み上げ、一部の銀行を中心に異常なほどの超低金利を演出した。

 これはいわゆる債券バブルに近いものとなり、6月17日に日経平均株価が9000円台を回復し、この日実施された20年国債の利率が1%割れのクーポンとなり、大手生保などが超長期国債の購入を手控えたことが明らかになったことをきっかけに、債券相場は急落した。これがのちにVARショックと呼ばれた債券相場の急落である。

 今回の債券相場の調整も背景には日銀の異次元緩和がある。VARショックの際は日銀の量的緩和を背景にどこまで長期金利が低下するか試すような相場となっていた。そこには大手銀行による仕掛け的な動きがあり、10年債利回りの0.430%という過去最低を記録するまでに至った。ただし、このバブルは20年債の利回りが1%を割り込んだあたりをきっかけに崩壊した。

 今回は2003年6月11日と同様のことが2015年1月20日に起きていた。5年債利回りはマイナスとなり、10年債は一時0.195%と過去最低を更新した。すでに20年債の利回りは1.0%を割り込んでいた。この2015年1月20日に5年国債入札があったが最低落札、平均落札利回りともに0.000%となった。そして1月22日にはECBが念願の量的緩和を決定するが、この22日の20年国債入札は入札結果はそれほど悪くなかったものの、この結果発表後に相場は急落し、地合が急変した。2003年6月17日の20年国債入札も結果そのものは悪くはなかった。しかし、ふたを開けると最大手の買い手の存在がなかった。ここをきっかけに相場が急落したのである。

 10年債利回り、つまり長期金利が過去最低を更新し、20年債が1%割れで投資家がついてこなくなった。このあたりに今回とVARショックとの共通点がある。さらに今回は5年債カレントまでマイナス利回りになったが、これはまさに欧州の長期金利の低下に合わせて弾みでつけてしまった感が強い。

 その背景にあったのが、国内の銀行や証券のディーラーが、マイナス金利となるような高い価格でも国債を購入し、それをそれほど時を置かずにより高い価格でオペを使って日銀に売却し、鞘を稼ぐという動きであったとされる。相場が上がり続ける限り、この好循環は続く。業者としてしこのような行動に走るというのはある意味いたしかたない。これはVARショックの銀行の仕掛けも同様であった。しかし、相場が反転すると、この仕組みは崩れ去り、むしろ悪循環となり、ディーラーのリスク許容度が一気に低下してしまったものと思われる。

 今回の債券相場のプチバブルの崩壊は、ある程度利回りが上昇すれば落ち着くことも予想される。警戒された17日の20年国債入札もなんとか無難に切り抜けると地合が好転するかもしれない。しかし、今回も業者の痛手はかなり大きかったともみられ、日銀がいくら異次元緩和を続けようと、再び10年債の0.2%割れや5年債のマイナス金利化は難しくなる。短期債はさておき、5年債までのマイナス金利は日本においてはかなり説明が難しいこ。むしろ日銀の対応次第ではこのプチバブルの崩壊がプチでなくなる懸念もありうる。

 日銀は長期金利をコントロールできるとしているようだが、実はその日銀の金融政策を後ろ盾に市場参加者がコントロールしようとしていた。しかし、その市場参加者も痛い目にあった。これが市場の怖さでもある。日銀は物価や長期金利、さらには為替まで簡単にコントロールできるとの発想はかなり危険なものであることも認識すべきと思う。

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by nihonkokusai | 2015-02-17 09:08 | 債券市場 | Comments(0)
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