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異常なのはマイナス金利よりも金融政策か

 現在、日本でもマイナス金利が発生している、と言ってもピンと来る人はあまりいないのではなかろうか。預貯金金利はほとんど利息がつかないけれど、預金して金利が取られているわけではない。たしかにコンビニのATMで預金を下ろすと手数料が取られ結果としてマイナス金利となるかもしれないが、これはいまに始まったことではない。いまのところ日本の預貯金金利でのマイナスは発生していない。

 ただし、マイナス金利の先輩格のドイツでは、一部のオンライン銀行が2014年11月から大口預金に限り、預金額に応じて利息を付けるのではなく、顧客から利子を徴収するマイナス金利を同国で初めて導入した。すでに長期金利がマイナスとなっているスイスでは、クレディ・スイスは大手法人顧客から預金手数料を徴収することを明らかにしている。いずれ日本でも大口預金あたりがマイナスとなる可能性はありうるか。

 金利とは何であるのか。世界史の中での金利の起源は、古代文明発祥の地の1つとされているメソポタミアにあったと言われる。メソポタミア文明の時代、すでに寺院や土地所有者による利子付きの貸し出しが行われていた。利子の起源は、農業が始まった頃の種籾(たねもみ)の貸し借りによるものとされている。農民に対し神殿などが蓄えた種籾を貸し出し、それを借りた農民は借りた籾の量に3割程度上乗せして神殿に納めていた。これが利子の始まりとされている。

 資金を貸し借りする際にお金の価値を図るものとして金利が使われる。なぜ金利は存在するのか。お金を貸す際には金利を貰うことは当然のように考えているし、お金を借りる際には金利を払わなければならない。しかし、私たちが生活の中で、身近な人と小額のお金や物を貸し借りする際は、金利分を求めたり貰ったりしない場合もある。

 歴史を見ても、キリスト教の聖書などでは利子を否定する教えが存在している。そしてイスラム教では利子を取ることそのものが禁じられている。このためイスラム金融では利子ではなく、商品取引などから生じる利益や投資を行った結果の配当といった形態が利子の変わりとして採られている。

 経済社会においては、どうしても金利というものの存在が必要不可欠となる。経済の成長には設備投資などのために巨額な資金が必要となる。日本のような間接金融が主体となる国では、そのために貯蓄が必要となり、貯蓄の存在は利子がなければ成り立たない。直接金融の場合も企業が発行する債券には利子が必要となる。もし金利がつかなければ銀行にお金を預けたり、債券を購入するというインセンティブはなくなってしまう。

 しかし、預貯金には決済機能がついている。現在は特に電子化が進んでおり、給与の振り込みや電気料金などの引き落としについても銀行などの口座が行われている。このためたとえ金利がゼロ近くになっても口座にある程度の現金を入れておく必要がある。また、銀行にとってはこの預貯金が原資となり、それを元手に運用するため、マイナス金利にして預金額を減少させてしまうと運用の元手がなくなることになる。

 スイスでは10年あたりまで、ドイツや日本では5年あたりまでの金利がマイナスになろうとも、預貯金金利がマイナスとはならないのはこのような当たり前の理由が存在する。

 しかし、ECBは金融政策の一環として、下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)をマイナスとし、預金ファシリティ金利だけでなく超過準備や政府預金などを含めてユーロシステム内にある同様の預金に関して適用した。中央銀行にとり当座預金の現金は何かしらに運用して利益を得ることを目的としてはいない。このため、むしろ短期の預金に資金を止めておかず、もう少しリスクをとって貸し出しやリスクのある資産に資金を回させるたるに、マイナス金利を導入した。

 ところが日銀は当座預金に現金を積み上げて、マネタリーベースを大きくさせれば、インフレ期待が出て物価が上がるとの理由から超過準備の金利を0.1%に保っている。日銀にとり負債側の超過準備が膨れあがる分、反対側の資産として国債の残高が膨れあがる。これに対しECBは超過準備の金利をマイナスのまま大胆な国債買入を行おうとしている。なかなか面白い対比となっている。

 短期金利は中央銀行が操作しており、このようなマイナス金利の発生も技術的には可能である。個人であればマイナス金利が発生すればタンス預金にすれば良いかもしれないが、金額の大きな法人同士の取引では現金をそのまま置いておくことは現実的に無理がある。つまり保管する金庫が必要になる上、盗難リスク、さらに毎日のように現金の出し入れをする手間を考慮すれば日銀の当座預金や銀行などの口座を利用せざるを得ない。ここの金利をマイナスにするのはあまり現実味がない。このあたりECBやスイスなどマイナス金利を政策金利にも適用している事例はなかなか興味深いといえる。

 それではどこで日本のマイナス金利が発生しているのかといえば、国債市場においてである。その背景には日銀の大胆な買入や、海外投資家などからの需要があり、国債の担保需要などもある。

 それでもマイナス金利が異常な状態であることにかわりはない。日本の物価や経済はマイナス金利を発生させるほどの異常事態であるのか。それよりも異常なのは中央銀行の金融政策の方にあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-01-29 09:35 | 日銀 | Comments(0)
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