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矛盾の多い日銀の追加緩和理由

 26日に12月18日、19日開催の日銀金融政策決定の議事要旨が公表された。このなかで原油価格の下落と金融政策運営の関係について委員の間での議論があったことが記されていた。

 「大方の委員は、「量的・質的金融緩和」の拡大は、原油価格の下落そのものに対応したものではなく、需要面の弱めの動きや原油価格の下落から物価上昇率が短期的に伸び悩む中で、デフレマインドの転換が遅延するリスクの顕現化を未然に防ぐために実施したものであるとの認識を示した。」(日銀金融政策決定会合議事要旨より)

 昨年10月31日の異次元緩和第二弾は、原油価格の下落そのものに対応したものではないとしている。当然であろう。日銀が量的緩和を拡大することで、原油価格の下落を止められるわけがない。原油価格の下落が止められなければ、原油価格の影響による物価下落も止められない。

 「需要面の弱めの動きや原油価格の下落から物価上昇率が短期的に伸び悩む中で」とは昨年4月の消費増税による需給面の影響と原油価格下落による「短期的」な影響を配慮して、「デフレマインドの転換が遅延するリスクの顕現化を未然に防ぐため」に実施したそうである。

 いくつか疑問がある。2013年4月の量的・質的緩和により、レジームチェンジが起きて、デフレマインドの転換をすでに引き起こしていたのではなかったのか。原油安による「短期的」な遅延リスクを意識してまて追加緩和の必要はあったのか。

 「予想物価上昇率について、委員は、市場の指標やエコノミストなどの調査をみるだけではなく、企業や家計の物価観やそのもとでの行動の変化を捉えることが重要であるとの認識を示した」(日銀金融政策決定会合議事要旨より)

 予想物価上昇率とはそもそも何か。物価変動債から導き出されるブレーク・イーブン・インフレ率はいかにも計算上の予想物価上昇率を示しているかに見える。しかし、これは債券市場のなかの一部参加者の、しかも短期的な国債需給の影響のもと、足元の経済指標などを考慮して出している数値にどれほどの意味があるというのであろうか。

 それよりも物価が上がると考えていれば、国債の利回りがもっと反応しているはずである。日銀が買い入れているから国債の利回りは押さえ込まれているというのもおかしい。日銀がいずれ実勢価格で買ってくれるから、とりあえず安心して低い利回りでも買えるだけであり、物価も上がりそうにない分、リスクも低いと市場参加者が感じているから現在の国債の利回りが形成されているのではなかろうか。

 「原油価格下落の物価に対する影響について、委員は、短期的には押し下げ要因になる、一方、やや長い目でみれば、経済活動に好影響を与え、基調的な押し上げ要因になる、前年比でみた短期的な物価押し下げ要因はいずれ剥落する、との認識を共有した。」(日銀金融政策決定会合議事要旨より)

 このなかで特に三番目の「前年比でみた短期的な物価押し下げ要因はいずれ剥落する」との部分であるが、1年経ってから今度は原油価格が上昇してくれば、物価が上がるとの期待というか希望が含まれているように思われる。

 1年先の原油価格の動向など、いくら日銀でも予想はつかないのであろう。現在の原油価格は下がりすぎのように見えるが、下げた理由も当然存在しているはずであり、1年後に原油価格は上昇すると予想するのであれば、その下げた理由と戻る理由も明確に示す必要がある。むしろそうした方が人々の物価予想に影響を与えやすくなるのではなかろうか。ただし、原油価格が元に戻るとなれば、長い目でみれば、経済活動に好影響を与え、の部分の前提が崩れてしまう。

 当然ながらこの議論のなかには本音が隠されているであろうことは容易に想像しうる。CPIの前年比は1%を割らないとしていたはずの日銀総裁がトーンダウンし、物価の上昇幅は順調に低下していた。これには日銀が指摘していた需要面の弱めの動きや原油価格の下落も大きかったであろうが、そもそもそんな些細なことには関係なく、大胆なことをすれば人々の物価予想に働きかけて物価は上がるとしていた前提はどこに行ってしまったのか。その前提が崩れていたのであれば、それも説明する必要がある。

 昨年10月の異次元緩和第二弾が、FRBのテーパリング終了とタイミングを合わせての円安誘導が仮に本当の理由であったのであれば、今回のECBの量的緩和の理由説明と同様に日銀の量的・質的緩和も円安を目的とした物価への影響にあったと置き換える必要がある。期待などに期待するよりも、よほど現実味がある。ただし、為替も相場である以上、常に言うことを聞くわけではないことはスイスが教えてくれていた。

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by nihonkokusai | 2015-01-27 09:39 | 日銀 | Comments(0)
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